2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15540342
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
川上 則雄 大阪大学, 大学院・工学研究科, 教授 (10169683)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
古賀 昌久 大阪大学, 大学院・工学研究科, 助手 (90335373)
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Keywords | フラストレーション / 電子相関 / 遍歴電子 / 量子揺らぎ / 遷移金属 |
Research Abstract |
本研究の最終年度であるので、強い相関をもつ電子系において軌道縮退とフラストレーションがどのように強相関現象に影響を与えるのかを包括的に調べた。 1.スピン・軌道フラストレーションの効果: 昨年に引き続き、軌道とスピンの自由度によるフラストレーション効果に関する研究を行った。軌道縮退のある強相関電子系の有限温度での相図を動的平均場理論を用いて調べた。その結果、軌道の自由度が増えるにしたがい、スピンゆらぎと軌道揺らぎの競合(フラストレーション)が生じ、絶縁相の出現が抑制されることが分かった。同様に、フント結合の大きさを調節することで、スピンと軌道の競合を調節した。その結果、この競合が増幅されることにより絶縁相が抑制されることを明らかにした。 2.軌道選択型モット転移における重い電子の形成: 軌道縮退をもつ遷移金属酸化物での有効質量の増大には種々の説が提唱されている。ここでは、軌道縮退を持つハバード模型を用いて、軌道自由度に起因する重い電子の起源を調べた。特に、軌道選択型モット転移における中間相に軌道混成を導入することで、希土類化合物の重い電子系と極めてよく似た強相関金属相が実現することを指摘した。この結果は、京都大学の中辻らによって報告されているCaをドープしたSrルテネイト化合物における重い電子の起源を説明する可能性がある。 3.カゴメ格子、チェッカーボード格子上の電子系 フラストレーションの強い格子の典型的なものに2次元カゴメ格子がある。また、チェッカーボードと呼ばれる格子も、同様にフラストレーションの強い系として精力的に研究されている。これらのフラストレートスピン系にホールをドープした金属では、ホールの電荷自由度が非自明なスピン励起とどのように絡み合うのか、またこの相関電子系は重い電子を形成するのかといった基本的な問題がある。動的クラスタ近似と変分モンテカルロ法を用いてこの研究を行った。その結果、金属・絶縁体転移近傍の金属相に強いフラストレーションを反映した異常な準粒子状態が出現することを明らかにした。
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Research Products
(6 results)