2003 Fiscal Year Annual Research Report
一次元導体における異常なゆらぎとその動的性質に対する効果の理論的研究
Project/Area Number |
15540343
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
吉岡 英生 奈良女子大学, 大学院・人間文化研究科, 助教授 (40252225)
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Keywords | 有機導体 / カーボンナノチューブ / ナノグラファイトリボン / 充填率1 / 2 / 朝永-ラッティンジャー液体 / 光電子分光 / モット絶縁体 / スピン励起 |
Research Abstract |
一次元有機導体や二次元グラファイト面をベースにした一次元電子系の性質について以下のような研究成果をあげた。 1.従来盛んに研究されてきた有機導体は充填率が1/4であるが、最近充填率が1/2の有機導体すなわち1:1塩も合成され、電荷秩序(CO)状態の存在に関する実験的報告もなされている。この系のCO状態の性質を議論するため、充填率1/2一次元拡張ハバード模型のCO状態における励起スペクトルを調べた。用いた手法は、経路積分法に基づき平均場解の周りのゆらぎをRPAで取り込み、電荷およびスピンの動的感受率を計算し、その極から励起スペクトルを決定するというものである。励起の大部分は個別励起の連続状態であるが、波数がπ近傍に集団励起のモードが現れ、電荷励起は連続状態の上に、スピン励起は連続状態の下にあることを示した。さらに、前年度の研究より、充填率が1/2の場合には電荷秩序状態が実現されても核磁気緩和率は一種類であり、ナイトシフトも分裂しないことが明らかにされていたが、実験的研究ではナイトシフトの分裂が観測されている。この原因をアニオンへの電荷移動が完全には起こっておらずそのため充填率が1/2からずれているためではないかと考え、この場合のナイトシフトを理論的に考察した。その結果、充填率が1/2からずれている場合(充填率は1/2-δ)には確かにナイトシフトは分裂することを示した。さらに、臨界温度近傍では分裂の大きさと電荷秩序状態の秩序パラメータの間には比例関係が成り立つこと、また、δを変化させた場合のナイトシフトの分裂に見られるスケーリング則を見出した。 2.二次元グラファイト面をベースにした一次元物質としては、この面を直径がナノメータサイズの葉巻状に丸めた構造を持っカーボンナノチューブとこの面からナノメータサイズの幅を切り出したナノグラファイトリボンが知られている。カーボンナノチューブでは電子間相互作用によって朝永-ラッティンジャー液体(TLL)状態が実現していることが理論的に予言され、また輸送特性の測定はその結果をサポートしていた。しかしながら、輸送特性の実験では低温(約100K以下)ではTLL的な振る舞いは観測されていなかった。本研究で実験グループとの共同研究で光電子分光によって直接電子状態密度を観測することによって、10Kから室温までカーボンナノチューブでTLL状態が実現していることを明らかにした。また、ナノグラファイトリボンには肘掛け椅子型とジグザグ型の2種類があるが、ジグザグ型のフェルミエネルギー近傍の分散関係は通常の正方格子の場合と異なり特異なものである。この点に着目して電子相関効果について研究をおこない、基底状態は電荷励起にギャップをもつ絶縁体(モット絶縁体)となること、またジグザグ線の数が偶数の場合にはスピン励起にもギャップが開くが、奇数の場合にはスピンギャップがないことを示した。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] H.Yoshioka, Y.Hashizume: "Excitations in the charge ordered state of one-dimensional extended Hubbard model at half-filling"Synthetic Metals. 135-136. 551-552 (2003)
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[Publications] H.Yoshioka: "Tomonaga-Luttinger-liquid behavior in conducting carbon nanotubes with open ends"Physica E. 18. 212-213 (2003)
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[Publications] H.Shiozawa et al.(全16名): "Valence-Band Photoemission Study of Single-Wall Carbon Nanotubes"AIP Conference Proceedings. 685. 139-142 (2003)
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[Publications] H.Yoshioka: "Spin Excitaion in Nano-Graphite Ribbons with Zigzag Edges"Journal of the Physical Society of Japan. 72. 2145-2148 (2003)
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[Publications] H.Ishii et al.(全15名): "Direct observation of Tomonaga-Luttinger-liquid state in carbon nanotubes at low temperature"Nature. 426. 540-544 (2003)
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[Publications] H.Yoshioka, Y.Hashizume: "Charge ordering and Knight shift in one-dimensional electron systems nearly half-filling"Journal de Physique IV. (印刷中).