2005 Fiscal Year Annual Research Report
一次元導体における異常なゆらぎとその動的性質に対する効果の理論的研究
Project/Area Number |
15540343
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
吉岡 英生 奈良女子大学, 大学院・人間文化研究科, 助教授 (40252225)
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Keywords | 分子性導体 / 一次元電子系 / 充填率1 / 4 / 核磁気共鳴 / 電荷秩序 |
Research Abstract |
1.極最近、ドナーとアニオンの比が2:1から少しはずれ不整合となっている分子性導体、(MDT-TSF)X_n、(MDT-ST)X_n、(MDT-TS)X_n(Xは一価のアニオンであり、n【similar or equal】0.42-0.45)が合成され、その伝導特性や磁気的な性質が測定されている。結果は以下のとおりである。MDT-TSF塩、MDT-ST塩は常圧で金属的な挙動を示し4Kで超伝導体へ転移するが、これらに比べバンド幅が狭い(MDT-TS)(AuI_2)_<0.441>は、常圧において85Kで抵抗極小を示して絶縁化し、さらに50Kで反強磁性体へ転移する。また、X線散乱の実験から、これらの物質群ではドナー分子、アニオン分子ともに、それぞれ異なった周期で規則的に配列していることが観測されている。電子の充填率が格子と不整合であるにもかかわらず金属絶縁体転移がおこるのかを明らかにするため、不整合格子を有する一次元電子系の基底状態を調べた。その結果、アニオンからのポテンシャルを考慮すると、系は有効的に充填率が1/2となり、絶縁体の基底状態を持つことが見出された。さらに、バンド幅を増加させると基底状態は絶縁体から金属状態へ転移する。この結果は上に述べた物質群の金属絶縁体転移を定性的に説明する。 2.ナイトシフトや核スピン緩和率の分裂が電荷秩序状態の実験的証拠と考えられ、またこれらの分裂幅から電荷不均一性が見積もられている。しかし、充填率1/4の場合にはその主張をサポートする理論的研究が行なわれていなかった。本研究では充填率1/4一次元拡張ハバード模型に対して平均場近似からのゆらぎをRPAで取り込んで純粋な電荷秩序状態におけるナイトシフトと核スピン緩和率を計算し、実際上記の主張が正しいことを示した。さらに、核磁気共鳴の実験から見積もられた電荷不均一性は実際の値よりも大きくなるという結果を得た。
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Research Products
(4 results)