2004 Fiscal Year Annual Research Report
低次元有機化合物におけるアンコンベンショナル密度波の検証
Project/Area Number |
15540349
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
川又 修一 大阪府立大学, 工学研究科, 講師 (50211868)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石田 武和 大阪府立大学, 工学研究科, 教授 (00159732)
加藤 勝 大阪府立大学, 工学研究科, 助教授 (90204495)
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Keywords | 電子スピン共鳴 / 有機化合物 / BEDT-TSF分子 / LabVIEW / 自動測定 / 磁場制御 / 金属絶縁体転移 / 超伝導 |
Research Abstract |
空洞共振器を用いた既設のKuバンド(15GHz)帯電子スピン共鳴(ESR)クライオスタットにおいて、電磁石に直流電流を流し磁場を発生するための電源を制御する定電圧発生装置を、ADVANTEST社TR6161に更新することにより、磁場制御の精度を向上させ、磁場ステップを約0.05Gaussとすることができた。昨年度導入した装置を含め、装置はすべてGPIBインターフェース経由でコンピューターに接続し、所属学科で無償学科ライセンスを受けているソフトウェア(ナショナルインスツルメンツ社LabVIEW)を用いて自動測定を行えるようにした。 この装置を用いて、有機化合物λ-(BEDT-TSF)_2Fe_<1-x>Ga_xCl_4 (x=0,0.4,1.0)のESR測定を行った。この系は、BEDT-TSF分子層におけるπ電子が2次元的電気伝導を担い、一方アニオン層にあるFeイオンの3d電子が局在磁気モーメントを持ち、伝導性π電子と局在d電子間に強い相関が見られるいわゆるπ-d系化合物の代表例である。アニオン層に含まれるFe原子とGa原子の割合を制御することにより、基底状態が系統的に変化することが報告されている。x=0の物質は、室温から9Kまでの温度領域では常磁性金属であり、9K以下の温度領域では反強磁性絶縁体となる。xの増加とともに反強磁性を伴った金属絶縁体転移の温度は減少し、xが0.5以上になると超伝導が出現するようになる。x=1.0の物質は、金属絶縁体転移を示さず、約5K以下で超伝導を示す。 x=0の物質では、9Kでの金属絶縁体転移に加えて、9Kから70Kまでの温度領域において、誘電応答(44.5GHz)、比熱、プロトンNMR、X線回折により異常が観測されており、π電子系における強誘電絶縁体および金属ドメインの2相分離が提案されている。ESR測定により、70K以下における大きなg値シフトおよび70K付近での共鳴線幅の極大が観測された。120Kにおけるg値の角度依存性が伝導面であるac面の対称性を反映していないことから、観測しているシグナルは基本的にアニオン層Feイオンの局在d電子によるものであると考えられる。π電子系の異常に伴いd電子のESRに異常が観測されたことは、強いπ-d相関の証拠であるといえる。 x=0.4の物質においても同様の異常が観測された。このことはFeとGaの混晶物質においても、誘電異常が起こっている可能性を示唆している。一方、x=1.0の試料では、予想どおり伝導電子の性質を反映したπ電子のシグナルのみが観測された。
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