2003 Fiscal Year Annual Research Report
Tsallisの非加法的統計力学に基づくカタストロフを含む複雑系の研究
Project/Area Number |
15540360
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
阿部 純義 筑波大学, 物理学系, 助教授 (70184215)
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Keywords | 複雑系 / カタストロフ / Tsallis統計 / インターネット / 地震活動 / ミクロカノニカル集団 / 最大エントロピ原理 / ゲージ変換 |
Research Abstract |
研究課題「Tsallisの非加法的統計力学に基づくカタストロフを含む複雑系の研究」に関して、本年度はおもにインターネットの複雑な挙動の統計力学的解析をおこなった.まず、Ping実験を実施し、パケットの旅行時間の時系列を取った.各閾値に対して、それよりも長時間の旅行時間をもつ状態を「渋滞状態」それ以下を「sparse状態」と定義し、「sparse状態」の時間間隔の統計的振る舞いを調べた。その結果、時系列がすべてTsallis統計に従う種々の定常状態間を遷移することを見い出した。次に、「sparse状態」の時間間隔時系列が、地震現象において広く知られているGutenberg-Richter則とOmori則に従うことを発見した。このことは、インターネットが地震現象や株価変動と同様の挙動を呈することを示しており、これら3つの複雑系がすべてTsallisの非加法的統計力学と深く関わっていることを示唆している。従って、地震現象を非加法的統計力学という新しい視点から研究することになった。そこで、南カリフォルニアおよび日本での地震データに基づき、2つの連続する地震の空間的距離の統計性を調べた。その結果、極めて大きな相関係数値をもって、データがTsallis統計に従うことが分かった。以上を、合計4編の論文として学術専門誌上で発表した。 本年度は、カタストロフを含む複雑系以外にも、統計力学の基礎的問題に関する理論的研究をおこなう機会があった。一つは隠れたゲージ変換構造を用いて量子力学の原理からミクロカノニカル集団を導出するというものであり、もう一つは任意の与えられた分布関数によって最適化される一般化されたエントロピーの構成である。これらも、2編の論文として出版した。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] S.Abe, N.Suzuki: "Gutenberg-Richter law for Internetquakes"Physica A. 319. 552-556 (2003)
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[Publications] S.Abe, N.Suzuki: "Itineration of the Internet over nonequilibrium stationary states in Tsallis statistics"Physical Review E. 67. 016106 (2003)
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[Publications] S.Abe, N.Suzuki: "Law for the distance between successive earthquakes"Journal of Geophysical Research. 108. 2113 (2003)
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[Publications] S.Abe, T.Kobayashi: "Hidden gauge structure and derivation of microcanonical ensemble theory of bosons from quantum principles"Physical Review E. 67. 036119 (2003)
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[Publications] S.Abe, N.Suzuki: "Omori's law in the Internet traffic"Europhysics Letters. 61. 852-855 (2003)
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[Publications] S.Abe: "Generalized entropy optimized by a given arbitrary distribution"Journal of Physics A. 36. 8733-8738 (2003)