2004 Fiscal Year Annual Research Report
Tsallisの非加法的統計力学に基づくカタストロフを含む複雑系の研究
Project/Area Number |
15540360
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
阿部 純義 筑波大学, 大学院・数理物質科学研究科, 助教授 (70184215)
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Keywords | カタストロフを含む複雑系 / 複雑ネットワーク / スケール不変統計 / Tsallisの非加法的統計力学 / 拡張されたEuler関係式 / 拡張されたGibbs-Duhem関係式 / Shore-Johnsonの定理 / 最小相互エントロピー原理 |
Research Abstract |
本年度は計画の最終年度であるが、研究課題に関して重要な進展が得られた。まずカタストロフを含む複雑系の現象として地震活動に着目し、新しい視点から研究を展開した。地震データを時間発展する有向ランダムグラフに写像し、そのトポロジカルな性質を解析した。頂点間の分離度および周期が共にスケール不変な統計法則に従うことを見出した。これらはイベント間相関の長距離性と周期の予測不可能性を意味する。昨年度に得られた結果である結合度分布のベキ則性とあわせて、地震活動の複雑性の定量化に成功したことになる。またこれらの結論は、先に得られている地震活動の時空的複雑性とTsallisの非加法的統計力学との密接な関連について重要な視点を与え、今後の展開に繋がるものである。一方Tsallisの非加法的統計力学自体に関する理論的基礎研究についてもいくつかの結果が得られた。それらのうち特に重要なものは以下の3つである:1)長距離相互作用系の熱力学において数値的に発見されたスケーリング則を、熱力学におけるEulerおよびGibbs-Duhem関係式にあらわれる諸変数の定義を拡張することにより理論的に導出できたこと、2)非加法的統計力学を特徴付ける分布関数はTsallisエントロピーからでもRenyiエントロピーからでも導かれるために生じる困難を解決し、非加法的統計力学ではTsallisエントロピーを用いなければならないことを示したこと、および3)Tsallisの非加法的統計力学が基礎とするq-期待値という概念が何故必要なのかを証明したこと。これらのうち特に3)では、物理量に対する通常の期待値の定義を用いた理論形式とq-期待値を用いた理論形式とを比較し、それらが最小相互エントロピー原理の無矛盾性に関するShore-Johnsonの定理を満たすか否かを調べることにより、q-期待値を用いなければならないことを示した。
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Research Products
(6 results)