2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15540393
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
早川 尚男 京都大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (90222223)
|
Keywords | 気体分子運動 / はね返り係数 / 散逸粒子系の力学 / 非弾性気体 / ASEP |
Research Abstract |
本年度の研究成果は以下の様に分類される。 (1)気体分子運動論に基づく非平衡熱力学モデルの検証と気相中への化学反応への応用 (2)非弾性衝突をする弾性体の理論解析 (3)非弾性気体の統計力学 (4)確率過程格子モデルの理論的研究 (5)「散逸粒子の力学」の出版 これらの項目は論文出版に至った目に見える成果であり、他にも年度内に粉体摩擦の理論的研究の論文を投稿している。順を追って成果を説明しよう。 (1)に関しては厳密には散逸粒子系とは言えないが、ハードコア粒子でも非平衡環境に置かれることで散逸が生じるので広義の散逸粒子として成果を報告する。ここで得られた成果は1935年以来の懸案であった定常熱流の2次の摂動解を、摂動論の枠内でほぼ厳密に導出に成功したこと、それに付随してSST(非平衡熱力学)やInformation Theory等の既存の変分法的アプローチの誤りを指摘したことである。また気相中の化学反応率の算定にも成功した。これらの成果は既に内外で高く評価されている。 (2)はマクロな物質の非弾性衝突に関する研究であり、斜め衝突のはねかえり係数がどのように決定されるかを主に数値モデルの解析によって論じた。特に斜め衝突において衝突方向が大きく変化することから、はねかえり係数は1を大きく越えるが、その機構を明らかにしたことは散逸粒子系の動力学研究において大きな進展である。 (3)では熱的環境下で励起される非弾性粒子の気体がどのような流体力学、輸送特性を持つかを明らかにした。現在、実験室で粉体気体を実現することに成功した論文を執筆中であるが、そこでも外部振動下での定常状態が実現しており、今年の成果とのかねあいが注目される。 (4)は散逸粒子の確率モデルであるASEP(=Asymmetric Simple Exclusion Process)の理論解析であり、密度が急に変化するキンクのランダムウォークに着目して密度相関のパワースペクトル出現のメカニズムを完全に明らかにしたものである。現在はASEPをマルチレーンに拡張する課題に取り組んでいる。 (5)は研究代表者の研究のバックグラウンドを平易に解説した本である。
|
Research Products
(7 results)
-
[Publications] Hisao Hayakawa, Hiroto Kuninaka: "Theory of the inelastic impact of elastic materials"Phase Transitions. 77(印刷中). (2004)
-
[Publications] Hisao Hayakawa: "Hydrodynamics of driven granular gases"Physical Review E. 68. 031304-1-031304-6 (2003)
-
[Publications] S.Takesue, T.Mitsudo, H.Hayakawa: "Power-law behavior in the power spectrum induced by Brownian motion of a domain wall"Physical Review E. 68. 015103(R)-1-015103(R)-4 (2003)
-
[Publications] Kim Hyeon-Deuk, H.Hayakawa: "Contributions of steady heat conduction to the rate of chemical reaction"Chemical Physics Letters. 372. 314-319 (2003)
-
[Publications] Kim Hyeon-Deuk, H.Hayakawa: "Test of Information Theory on the Boltzmann Equation"Journal of Physical Society of Japan. 72. 2473-2478 (2003)
-
[Publications] Kim Hyeon-Deuk, H.Hayakawa: "Kinetic Theory of a Dilute Gas System under Steady Heat Conduction"Journal of Physical Society of Japan. 72. 1904-1916 (2003)
-
[Publications] 早川尚男: "散逸粒子系の力学"岩波書店. 109 (2003)