2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15540463
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Research Institution | National Institute of Polar Research |
Principal Investigator |
今栄 直也 国立極地研究所, 南極隕石センター, 助手 (60271037)
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Keywords | ナクライト / 火星隕石 / 実験岩石学 / マグマ / 相平衡 |
Research Abstract |
平成15年度は、まず、ナクライト母マグマ組成の相平衡実験および同組成からの冷却実験のための酸素雰囲気制御炉の立ち上げを行った。既存の縦型環状電気炉に、水素と2酸化炭素ガスとの混合ガス導入のガス混合器およびその配管を完成させた。 試薬を調合し、SiO_2,MgO,FeO,CaO,TiO_2,Al_2O_3,Na_2O,K_2O,の主成分元素からなる母マグマ組成を作成した。これを、還元雰囲気内で溶融・急冷によりガラスにした。作成したガラスを乳鉢にて粉末にし、実験出発物質とした。 100〜200ミリグラムのペレットを作成し、Ptワイヤーループ法により、QFMバッファー付近での酸素雰囲気で1020〜1275℃の範囲で加熱・平衡化させた。 実験は、これまでに23回行った。 結果・考察:1200℃以上では、ほぼ全溶融し、磁鉄鉱が1200℃付近で初晶であることがわかった。次に、1150℃以下で、自形のオージャイトが析出を始めた。約10℃の差でかんらん石が析出した。かんらん石は不定形で、オージャイトよりはるかに低い数密度である。サイズはオージャイトより大きい。この結果は、実際のナクライトの特徴と調和的である。 オージャイト組成は、ナクライトで観察されたオージャイト斑晶コア組成に一致する。かんらん石組成は、オージャイト組成と高温で平衡に存在した組成である。 こうした結晶の析出は、1200〜1030℃の範囲で、一般的なマグマから析出する結晶の温度としては低い。これはナクライトマグマを特徴づけている鉄に富むマグマから形成したことによる。 2年目以降は、ナクライトマグマからの冷却実験を開始する。また、再現が無水ナクライトの再現が成功すれば、水質変成実験に進展させる。
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