2004 Fiscal Year Annual Research Report
アルコール-水混合溶液中でのペプチドモデル分子のコンフォメーションとその圧力効果
Project/Area Number |
15550016
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
高椋 利幸 佐賀大学, 理工学部, 助教授 (70291838)
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Keywords | ペプチドモデル分子 / 脂肪族アルコール / ハロゲノアルコール / NMR化学シフト / 赤外分光法 / 溶存挙動 / 脱水和 / 疎水性相互作用 |
Research Abstract |
赤外分光法および^1H-,^<13>C-NMR法により、2-プロパノール(2PrOH)-水ならびにヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)-水混合溶液中においてペプチドモデル分子としての1,4-ペンタンジオール(1,4-PD)の溶存状態を研究した。これらの結果と平成15年度に実施したエタノール(EtOH)-水およびトリフルオロエタノール(TFE)-水混合溶液中の1,4-PD分子の溶存挙動からアルコール添加の効果を考察した。 EtOH系と2PrOH系では、1,4-PD分子の4位炭素原子の^<13>C-NMR化学シフトはアルコールモル分率の増加にともない高磁場シフトし、5位炭素原子は低磁場シフトした。このとき、5位のC-H伸縮振動は低波数シフトした。これらのモル分率依存性には、1,4-PD分子の脱水和が寄与していると考えた。すなわち、脂肪族アルコール分子の場合、アルコール添加によって1,4-PD分子の水酸基に水素結合している水分子が脱水和され、4位炭素原子の電子密度が増加すると考察した。この影響を受けて5位炭素原子の電子密度が減少する。^1H-NMR化学シフトもこれらのことを支持する結果であった。これに対し、TFE系とHFIP系では、モル分率の増加にともない5位炭素原子は高磁場シフトした。また、5位のC-H伸縮振動は高波数シフトした。これらの結果には、疎水性の高いTFEおよびHFIP分子と1,4-PD分子のCH_3基(5位)との疎水性相互作用が寄与していると考えた。すなわち、ハロゲノアルコール分子との疎水性相互作用により電子密度が高くなったCH_3基では、5位炭素原子は高磁場シフトし、C-H結合は強化される。一方、4位炭素原子の化学シフトは、モル分率増加に対してTFE系ではほとんど変化しないのに対し、HFIP系では大きく低磁場シフトした。これはCH_3基(5位)やCH_2基(2,3位)に対するHFIP分子の疎水性相互作用の影響が4位炭素原子まで及んだことによると考えた。 この研究から、脂肪族アルコール系では、1,4-PDに対する脱水和が強く起こり、ハロゲノアルコール系では1,4-PDとの疎水性相互作用が強く起こっていることが結論された。1,4-PD分子の溶媒和に対するアルコールの効果の順(HFIP>TFE>EtOH【approximately equal】2PrOH)は、タンパク質のフォールディングに対する効果の順と一致していた。
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Research Products
(6 results)