Research Abstract |
これまで,クラウンエーテルと金属イオンとの錯生成における選択性は,クラウンエーテルの空孔と金属イオンとのサイズ適合性によって定性的に説明され,溶媒の寄与はほとんど知られていなかった。本研究では,電気伝導度法やキャピラリー電気泳動法を用いて種々の極性溶媒中におけるクラウンエーテル-金属イオン錯体の安定度定数を精確に決定し,錯体の安定性と選択性に及ぼす溶媒効果の重要性を実証した。例えば,ジベンゾ-3m-クラウン-m(m=6,7,8,10)とアルカリ金属イオンとの錯生成において,ドナー性の非常に弱いニトロメタン中では,Cs^+<Rb^+<K+<Na^+の順に常にサイズの小さいイオンほど安定な錯体を生成することを見いだし,これが気相中でのクラウンエーテルの真の選択性に対応することを示した。これより,アセトニトリル,炭酸プロピレン,水,メタノールなどの他の極性溶媒中で見られる空孔サイズ依存的な選択性は,主として溶媒の寄与によることを明らかにした。さらに,クラウンエーテルとその錯イオンについて溶媒との相互作用を評価するために,溶媒間移行自由エネルギー(移行活量係数)を決定した。これより,クラウンエーテルの酸素原子が水と強く相互作用していることや,錯イオン内の中心金属が溶媒から効果的に遮蔽されていることなどが示された。また,錯体の安定性・選択性に及ぼす溶媒の寄与を溶質-溶媒間相互作用によって初めて定量的に説明した。
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