Research Abstract |
前年度は,チップ型センサーの高機能化,多機能小型ポテンショスタットの開発およびミクロフローインジェクション(microFIA)システムの構築により,残留塩素を,高感度で,on-siteでの分析を実現できた。今年度は,新しい原理に基づく新規残留塩素の分析法を確立し,その評価を行った。研究成果は以下の2つからなる。 1.ウェーブレット支援した信号比法を用いた矩形波ボルタンメトリーにより残留塩素定量法の確立 ジエチル-p-フェニレンジアミン(N,N-diethyl-p-phenylenediamine,DPD)用いた比色法で残留塩素を低了する場合,過酸化水素などの酸化剤によっても発色するので,選択性に問題があると指摘されている。本研究では,DPDの電気化学的挙動を検討したところ,酸性条件下で残留塩素が共存すると,DPD還元ピーク(0.41V)の他に+0.27V付近に新たな還覧元波が観測された。この還元波はセミキノン中間体によるものでなく,次亜塩素酸との反応において生成した反応物によるものと推測している。また,新しい還元波は残留塩素の濃度に依存し,定量できることが確認された。分析感度を改善するためウェーブレット支援した信号比法を用いて,ボルタモグラムのピークの分離を実現でき,残留塩素の検出下限0.5μM(26ppb)であった。この方法は共存する酸化剤による妨害が認められず,残留塩素の新しい定量法として期待できる。 2.デジタルカメラを利用した色彩分析法による残留塩素の簡易分析法の開発 色彩色差計測法は,従来の比色法と比べて広いダイナミックレンジや,多成分同時分析が可能という優れた特長を有している。本研究では,撮影した画像から色彩情報を得るためのソフトウェアの開発,及び撮影ごとに一定の露出が得られるようにするため,白色発光ダイオード(LED)を内蔵した照明箱を開発した。続いて1,10-フェナントロリンを利用する鉄の定量法を利用して種々の条件の最適化を行い,実際試料への応用として河川水中の鉄を定量した。また,N,N-ジエチル-p-フェニレンジアミンによる残留塩素の定量に応用し、水道水中の残留塩素定量に応用した。デジタルカメラを利用した色彩分析法は簡便で,DPD法とよい一致した結果が得られた。 これらの成果は学術論文または国際会議にて発表されていた。
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