2003 Fiscal Year Annual Research Report
分子拡散を利用したタンパク質-リガンド相互作用の高精度検出法の開発
Project/Area Number |
15550076
|
Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
田代 充 東京都立大学, 理学研究科, 助手 (40315750)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小野 晶 東京都立大学, 理学研究科, 助教授 (10183253)
|
Keywords | 薬剤スクリーニング / 核磁気共鳴法(NMR) / 分子間相互作用 / 分子拡散 / コールドスプレーイオン化質量分析法 |
Research Abstract |
医薬品の開発過程において有効なスクリーニング系の確立は不可欠であり、特にin vitroでのスクリーニング系として簡便、廉価な方法が望まれる。ここ数年、核磁気共鳴(NMR)法の薬剤スクリーニングへの応用が試みられており、新規なスクリーニング法として注目されている。既存の方法として、レセプターとなるタンパク質を^<15>Nなどの安定同位体で標識し、リガンドとの結合を2次元^1H-^<15>N相関スペクトルによりモニターする方法がある。長所としては、短時間で相互作用の確認ができ、また結合部位に関する情報を得ることができる。短所としては、安定同位体などのコストがかかることや測定可能なタンパク質の分子量制限(30-40kD)などの各種制限より、適用範囲に限界がある。 本研究では、既存の測定方法の短所を克服すべく、迅速、廉価なNMRによる新規薬剤スクリーニング系の開発を目的とした。具体的には安定同位体を使用せず、分子間相互作用に関与するリガンドまたはレセプターの水素核を1次元スペクトルで検出し、高親和性のリガンドを短時間で選別する手法の開発に取り組んだ。ヒト血清アルブミン-サリチル酸複合体をモデル化合物として使用し、NOEポンピング、T1ρ-filter NOESY、3次元DOSY-NOESYスペクトルの測定を行った。各スペクトルで分子間NOEピークが観測されたが、解析のし易さを考慮すると分子拡散を利用した3次元DOSY-NOESY法において良好なスペクトルが得られた。また、NMR以外の手法として、最近開発されたコールドスプレーイオン化質量分析法(CSI-MS)を使用し、複合体の直接観測を行った。これらの手法は80-100kD程度の高分子物質にも応用可能であり、相互作用の直接的な検出方法であることより、薬剤スクリーニングのみならず、酵素とその阻害剤といった幅広い生体物質の相互作用観測にも適用できるため、応用性、汎用性の高い方法として期待できる。
|
Research Products
(5 results)
-
[Publications] K.Furihata, S.Shimotakahara, M.Tashiro: "Improvement of double pulsed field gradient spin-echo ROESY experiments for identification of bound waters"Magnetic Resonance in Chemistry. 41. 955-958 (2003)
-
[Publications] H.Utsumi, H.Seki, K.Yamaguchi, M.Tashiro: "Segment identification of a ligand binding with a protein receptor using multidim ensional T1ρ-, diffusion-filtered and diffusion-ordered NOESY experiments"Analytical Science. 19. 1441-1443 (2003)
-
[Publications] M.Tashiro, N.Ishida, S.Shimotakahara, S.Tanabe, A.Okubo: "Ontogenetic changes of the water status in the heated Quail's egg as studied by nuclear magnetic resonance imaging"Analytical Science. 19. 933-936 (2003)
-
[Publications] M.Tashiro, et al.: "NMR structure of ubiquitin-like domain in PARKIN : gene product of familial Parkinson's disease"J.Biomol.NMR. 25. 153-156 (2003)
-
[Publications] 清 悦久, 田代 充, 山口健太郎ほか: "コールドスプレーイオン化質量分析法"分析化学. (印刷中).