2003 Fiscal Year Annual Research Report
結晶性高分子膜表面に特有な秩序構造とその構造形成ダイナミクス
Project/Area Number |
15550109
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
佐々木 園 九州大学, 大学院・工学研究院, 助手 (40304745)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 敬二 九州大学, 大学院・工学研究院, 助手 (20325509)
菊池 裕嗣 九州大学, 大学院・工学研究院, 助教授 (50186201)
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Keywords | 結晶性高分子固体表面構造解析 / ポリエチレン / 視斜角入射X線回折(GIXD)法 / 結晶構造 / 放射光X線回折 / パラクリスタル解析 |
Research Abstract |
結晶性高分子材料の表面構造は、撥水性、接着性、摩耗や摩擦等の材料表面物性と密接な関係にある。結晶性高分子固体表面の分子鎖凝集構造は、分子レベルで未解明であるため、それを明らかにすることは高分子材料表面の構造および物性制御に極めて重要である。本研究は、結晶性高分子固体膜表面に特有な秩序構造とその構造形成機構を分子レベルで明らかにする事を目的としている。平成15年度は、溶融状態から等温結晶化したポリエチレン固体膜表面領域の結晶格子サイズと結晶格子乱れを視斜角入射X線回折(GIXD)法に基づき評価した。 試料として、高密度ポリエチレン(HDPE)を用いた。約400nmの膜厚を有するHDPE膜は、ディップコーティング法により製膜した後、溶融状態から窒素雰囲気下、種々の結晶化温度で24時間等温結晶化して調製した。調製したHDPE薄膜表面領域の結晶構造を、大型放射光施設SPring-8のBL13XUビームラインにおける面内GIXD測定で評価した。膜表面近傍およびバルク(内部)領域における膜表面に垂直な格子面からのブラッグ反射を、それぞれ0.11deg.および0.20deg.の低角で試料にX線を入射して検出した。その結果、HDPE膜表面近傍の面内GIXDプロファイルから求めた斜方晶格子定数aおよびbは、バルク領域のそれに比べて小さい値を示した。また、(110)反射とその高次の回折に対しパラクリスタル解析を行ったところ、膜表面近傍における結晶格子の長距離および短距離秩序性がバルク領域のそれと比較して低いことが明らかになった。これらのことから、HDPE膜表面近傍では、バルク領域と比較して結晶格子サイズが小さく面内方向の結晶格子乱れが大きいことが示唆された。以上のように、筆者らは高分子固体自由表面に特異な結晶構造を実験的に初めて明らかにすることに成功した。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] H.Yakabe, S.Sasaki, O.Sakata, A.Takahara, T.Kajiyama: "Paracrystalline Lattice Distortion in the Near-Surface Region of Melt-Crystallized Polyethylene Films Evaluated by Synchrotron-Sourced Grazing-Incidence X-ray Diffraction"Macromolecule. 36(16). 5905-5907 (2003)
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[Publications] H.Yakabe, S.Sasaki, O.Sakata, A.Takahara, T.Kajiyama: "Crystal Structure in the Near-Surface Region of Melt-Crystallized Polyethylene Films by Grazing-Incidence X-ray Diffraction"Trans.Mater.Res.Soc.Jpn.. 29(in press). (2004)
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[Publications] 佐々木 園, 矢可部公彦, 梶山千里: "視斜角入射X線回折法によるポリエチレン固体膜表面の結晶構造評価"機能材料. 23(5). 36-43 (2003)