2005 Fiscal Year Annual Research Report
新規なバイオ成分分離膜デバイスを創製する非吸着性マテリアルの開発
Project/Area Number |
15550110
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
長瀬 裕 東海大学, 工学部, 教授 (40155932)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石原 一彦 東京大学, 大学院・工学系研究科, 教授 (90193341)
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Keywords | ホスホリルコリン / ジアミンモノマー / 芳香族ポリアミド / ポリウレタン-ウレア / バイオマテリアル / 生体適合性 / 抗血栓性 / 膜透過性 |
Research Abstract |
耐熱性と機械的強度に優れた生体適合性高分子膜材料の合成を目的として、本研究計画の初年度合成に成功したホスホリルコリン(PC)基含有ジアミンモノマーを基軸として、芳香族ポリアミドおよびポリウレタン・ウレアにPC基を化学結合させ各種ポリマーの合成を行った。いずれのポリマーも、昨年度行った血液適合性試験や表面分析の結果から良好な抗血栓性を示したものの、剛直な主鎖構造を導入したポリアミドではPC基濃度が膜表面に比べ膜内部のほうが高くなることがわかっている。そこで本年度は、PC基含有ポリアミドの合成において側鎖のPC基と主鎖をつなぐスペーサー構造が異なるジアミンモノマーを新たに合成し、抗血栓性の要因となるPC基を膜表面へ効果的に局在化させることを試みた。その結果、スペーサー部に長鎖アルキレン基やオキシアルキレン基を導入することでPC基が膜表面に局在化し、抗血栓性、すなわち生体適合性に優れたポリマー膜表面が得られることを明らかにした。一方、PC基含有ポリウレタン・ウレアについては柔軟なポリエチレンオキシドなどのソフトセグメントを主鎖骨格に導入することで、生体適合性に優れ弾性材料としてのポリウレタンの機械的特性を維持したポリマーマテリアルとなることを見出した。また、ソフトセグメントとしてポリジメチルシロキサンを含むPC基含有ポリウレタン・ウレアも合成できその生体適合性も確認できたので、今後は気体透過性など分離機能膜としての特性を調べていく予定である。さらに今期は、PC基を有するカルボン酸誘導体の合成にも成功し、高分子反応によりエチルセルロースなどのセルロース誘導体にPC基を化学結合させることが可能となることを見出した。この知見を基に、セルロース系膜材料などへのPC基の導入を今後検討し新たな膜材料あるいは表面修飾剤などへの応用展開をはかる。 以上述べたように、今期はPC基を導入した各種縮合系ポリマーの合成を行い、生体適合性の発現においてPC基が効果的に働くことを見出し、得られる材料は成膜性に優れ膜の機械的強度も充分に高いことを明らかにした。よって、目的とするバイオ成分分離膜素材として期待されるポリマーの構造がある程度絞り込まれたと考えている。
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