2005 Fiscal Year Annual Research Report
論理ゲート機能をもつ電気化学素子の構築。電子と化学信号による蛍光のスイッチング
Project/Area Number |
15550116
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
小村 照寿 金沢大学, 自然科学研究科, 教授 (00019746)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山口 孝浩 金沢大学, 自然科学研究科, 講師 (90272947)
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Keywords | アジン系色素 / 蛍光 / 酸化還元 / 消光 / 化学修飾電極 / 複合体 / スイッチング |
Research Abstract |
電子入力信号と化学信号の組み合わせを検討するために、フェノサフラニン薄膜の発光特性に対する酸塩基反応の効果を調べた。色素酸化体の二つのアミノ基をともにプロトン化すると、非蛍光性に変わることが分かった。言い換えると、色素が酸化電位(電子入力)に保持されてD^+の状態にあり、且つ化学入力で1個のプロトンを付加してDH^<2+>の状態にある時には蛍光を放出するが(光出力オン)、どちらかの入力が欠けると蛍光を出さない(光出力オフ)。したがって、酸性での入出力挙動はANDゲート特性に相当するけれども、pK_<a1>が0.8という値は敏速にpHを変えるには余りにも低すぎると言える。 実用的には10^<-3>M以下のイオン濃度を使って蛍光強度を変える必要がある。そこで、電子入力信号と分子認識過程を組み合わせて論理回路を構築する試みを行った。種々のゲストを検討した末に、溶液に0.1mM濃度の1,1'-フェロセンジメタノール(FM)を加えると、発光性D^+薄膜の蛍光がバックグランドレベルまで消光されることを見つけた。しかしながら残念なことに、溶液中にFMが存在すると、どんな電位に保持しても蛍光状態が回復せず、消光反応は不可逆的であることが分かった。 蛍光の消光に加えて、FMは電極電位に対する色素薄膜の電気化学的応答をも低下させた。0.2M硫酸中のFM溶液に薄膜電極を浸すと、色素の還元ピーク電流は10分以内でほぼゼロにまで減少し、一方でFMの酸化電流がゆっくりと増加した。加えて薄膜の吸収極大波長が500から550nm へ徐々に移動しつつ、ピーク吸光度が20%低下した。これらの事実から、薄膜内に取り込まれ濃縮されたFMが色素を不活性化しているものと推定される。 均一溶液中で両者の相互作用を調べた結果では、pHが5よりも高いと化学的相互作用が見られないけれども、酸性溶液だと不溶性の組成1対1の複合体が生成することから、相互作用には色素のアミノ基のプロトン化が関与しているものと推定される。この複合体形成を化学入力信号として使用するには、不活性化が起こる機構を解明しなければならない。
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