2004 Fiscal Year Annual Research Report
新しいπ電子骨格からなる有機超伝導体とそれらを構成成分とする超分子機能体の開発
Project/Area Number |
15550127
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
西川 浩之 筑波大学, 大学院・数理物質科学研究科, 助教授 (40264585)
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Keywords | 有機伝導体 / 超伝導 / 電荷秩序 / π電子系 / 超分子 / 分子内電荷移動 / 有機薄膜 / 有機太陽電池 |
Research Abstract |
超伝導発現を目指した物質開発として、従来研究されてきた有機ドナー分子であるテトラチアフルバレン(TTF)やテトラチアペンタレン(TTP)誘導体の共役π電子系を縮小した新たなドナー分子の開発と、それを基にした電荷移動型ラジカルカチオン塩の物性研究を行なってきた。有機ドナー分子のπ電子系を縮小することは、同一分子上に電荷が存在した際生じるクーロン反発,つまりオンサイトクーロン反発を、増大させることになり、化学的な分子修飾によって、電子相関を強めることが出来る。これまでに、TTFの縮小π電子系であるDODHTから3種類の超伝導体を発見している。昨年度の業績としては、TTP系縮小π電子ドナーの新合成法の開発、DODHT超伝導体の常圧における絶縁相の解明を行った。今年度は引き続き、DODHT塩の超伝導相近傍の状態を明らかにするため、測定圧力間隔を細かくし、詳細に輸送特性の測定を行い温度-圧力相図を作成した。その結果、これまでDODHT超伝導体は、16kbarの圧力下で超伝導転移を示すことを報告したが、PF_6塩では13.2kbarで超伝導転移と考えられるピーク構造を観測した。このようなピーク構造は、超伝導状態と常伝導状態が部分的に共存している場合に観測され、今回も磁場によるピーク構造の抑制により超伝導に転移していることを明らかにした。また、13.2から15.1kbarの圧力範囲では、超伝導相の直上に絶縁相が存在していることを見出した。この塩は、常圧で電荷秩序絶縁相を持つが、電気抵抗の温度依存性から電荷秩序による明瞭な絶縁化が8kbarまで観測されたことから、電荷秩序状態がこの圧力付近まで起こっているものと考えられる。以上のことから電荷揺らぎが超伝導発現にとって重要な役割を演じていることが示唆された。今後圧力下におけるより詳細な物性測定を行う必要がある。この結果に関しては,現在投中である。 さらに,TTFをドナー成分に,C_<60>フラーレンをアクセプター成分に用いたドナー-アクセプター系分子において、電荷分離状態の寿命を大きくするため、デンドリマー構造を導入した物質を第一世代(G1)から第三世代(G3)まで合成した。合成に成功したデンドリマー型TTF-C_<60>分子に対して、スピンコート法による薄膜化と太陽電池特性の評価を行った。その結果、変換効率は0.01%と低いものの、G1およびG2が太陽電池特性を示すことを見出した。G3に関しては、デバイス化がうまくいかず現在検討中である。変換効率が低いことは、可視領域の光吸収が高くないことが要因に挙げられる。今後より吸光度が大きい部位の導入を検討する必要がある。
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Research Products
(7 results)