2004 Fiscal Year Annual Research Report
マラリア原虫のヘム無毒化機構解析とヘム結合性抗マラリア薬の探索
Project/Area Number |
15550146
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Research Institution | Kyoto Institute of Technology |
Principal Investigator |
田嶋 邦彦 京都工芸繊維大学, 繊維学部, 教授 (50163457)
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Keywords | マラリア / ヘム / HRP2タンパク / モデルペプチド / ESR(電子スピン共鳴) / マラリアの成長阻害 / 抗マラリア薬 |
Research Abstract |
本研究では、マラリア原虫がヒト赤血球内部でヘモグロビンを栄養源として増殖する過程で副産する、フリーのヘムに対する防御機構について検討を行った。フリーのヘムはマラリア原虫の膜内に強く結合して、その膜構造を不安定化することで、生育阻害などの強い毒性を発言する。マラリア原虫は、フリーのヘムを無毒化する機構を有しており、特に、ヘムに強く結合するヒシチジンリッチタンパク質(HRP2)は中心的な役割を果たしている。HRP2とヘムの結合様式を錯塩化学的に検討するために、HRP2の繰り返し配列と類似のペプチドを多数合成し、そのヘム複合体の配位構造と電子状態を分光学的に検討した。 これまでに報告されている天然のHPR2とヘム複合体のESRスペクトルは線形が極めてプロードな成分と、比較的シャープな成分が混在していることが知られていたが、詳細は明らかにされていない。本研究で合成した、アミノ酸10残基を有するHRP2類似ペプチドは、ヘムと強く結合し、そのESR線形は極めてブロードである。モデルペプチドの鎖長を延長すると、プロードな成分と重なってシャープな成分が観測され、27量体のESR線形はHRP2ヘム複合体と良好に一致していた。この結果から、ブロードなESR信号を与える成分は、ヘムの第5位に軸配位したヒスチジンから7残基離れたヒスチジンが第6位に軸配位した錯体である可能性が明らかにされた。この配位構造は、HRP2が多数のヘムと結合するために適した配位構造である。ヘムとモデルペプチドの配位様式をESR分光法で検討することで、HRP2の繰り返し構造に多数含まれるヒスチジンの役割が配位化学的に明らかにした。本結果から、HRP2ヘム複合体を不安定化することで、抗マラリア薬の開発について分子論的な指標が得られた。
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Research Products
(3 results)