2003 Fiscal Year Annual Research Report
速度可変シャッターを用いた軟X線多層膜の精密膜厚分布制御と非球面形状創成への応用
Project/Area Number |
15560016
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
羽多野 忠 東北大学, 多元物質科学研究所, 助手 (90302223)
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Keywords | 多層膜 / イオンビームスパッタリング / 膜厚制御 / イオン銃 |
Research Abstract |
イオンビームスパッタリング成膜ではイオン銃の時間安定性が膜厚制御性を左右する。本研究で作する波長13.5nm用Mo/Si多層膜凹面鏡では、反射ピーク波長の許容誤差は2%であるが、現有設備の膜装置では、これまで成膜速度の変動のために反射ピーク波長に10%程度の誤差があった。したがってイオン銃の動作安定化を図り、成膜速度の変動を2%以内に抑えることが最優先課題である。イオン銃の動作原理は次のようなものである。イオン化室に静磁場を印加して電子をサイクロトロン運動させ、マイクロ波を導入して電子の運動を加速する。流量1.2SCCM(標準状態の体積に換算して毎分1.4cc)程度のArガスを注入する。電子と衝突したArガスがイオン化し、発生した電子がサイクロトロン運動によって別のArガスに衝突し、次第にイオン化室がプラズマで満たされる。イオン化室全体を-1.5kV程度の負の電位に保ち、アース電位の電極付近からArイオンを取出す。取出し口の外にはArイオンの逆戻りを防ぐために+100V程度の正の電位に保った引出し電極がある。Ar流量、加速電圧、引出し電極電圧のパラメーターをそれぞれ大きく振ってそれらに対するイオンビーム出力の依存性を詳細に調べ、出力最大の条件がそれぞれ1.4SCCM、-1.4kV、+300Vであることがわかった。その条件からAr流量を変化させて時間安定性の変化を調べた結果、Ar流量を増加させると出力は減少するが時間安定性が増す傾向があることがわかり、最適値は1.7SCCM-2.0SCCMであると結論した。イオン銃動作安定化調整の後に曲率半径50mm、276mm、300mmの凹面基板にMo/Si多層膜を成膜し、軟X線分光反射率計測により膜厚分布を評価した。来年度にこの結果を用いてコンピューター制御の速度可変シャッターで膜厚分布制御した多層膜凹面鏡を作製する。
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