Research Abstract |
高強度鋼やTi合金などの高強度材料の疲労では,10^7〜10^8cycleを越える超高サイクル・低応力域で,材料内部を起点とする破壊が生じる.研究代表者はこれまでの研究により,この理由を内部き裂先端の環境が真空環境に近いと考えることで説明できる可能性を示した.本研究では,この考えの妥当性を検証するために,(1)微小欠陥を起点とする疲労挙動を真空中で調べ,ΔK_<th>に及ぼす真空圧力の影響を明らかにすること,(2)真空中の微小欠陥近傍の初期伝播破面と内部き裂のそれを比較することにより,内部き裂周囲の環境の効果を調べること,を目的とした.このために,新たに真空回転曲げ疲労試験機を開発し,大気中および真空中で微小欠陥材の疲労試験を行った. 直径30μm×深さ30μmの微小欠陥を加工した高強度鋼試験片を用いて,10^<-3>-10^<-4>Paの真空圧力下で疲労試験を行った.その結果,真空中の疲労寿命は大気中に比べ約3-4倍,長くなった.一方,真空中の疲労限度は大気中に比べて約50MPa低下した.介在物の大きさ程度の小さな欠陥を起点とする場合,真空中のΔK_<th>は大気中に比べて低下することが明らかとなった. 微小欠陥周囲の初期き裂伝播破面をSEMにより解析した.従来,内部き裂の起点周囲には組織単位より微小な凹凸から成る特殊な破面領域が存在することが知られているが,真空圧力10^<-3>-10^<-4>Paの高強度鋼の破面ではこの特殊な破面は明瞭には認められなかった.一方,昨年度に行なった実験(真空圧力2×10^<-5>Pa)では,特にTi合金において,この特殊な破面が顕著に認められた. 以上から,内部破壊が低応力・長寿命で生じる現象は,上記下線部に示した考えによって説明できることが示された.しかし,内部き裂の初期伝播破面に及ぼす環境,特に真空圧力の影響は材質によって異なることが推察された.
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