Research Abstract |
CFRPの直交積層板および擬似等方性板において交流負荷を実施し,各周波数におけるインピーダンス特性を計測した.その結果,成形後のCFRP板では数百KHzまでの交流においては,交流インピーダンスは炭素繊維の電気抵抗によって説明可能であることが明らかになった.このことから,電気抵抗変化で損傷をモニタリングする手法を検討した.電流負荷電極と電圧測定電極が同じである2電極法を用いると,はく離発生時や繰返し負荷時に電極部分が損傷し,電気抵抗変化が電極部分で生じてしまう.このため,電流負荷電極と電圧測定電極を別にした4電極法を採用した.4電極法で電流負荷をCFRP板の端部から行うと,電流が0°繊維層だけを流れ,はく離検知の精度が著しく低下してしまう.そこで,ここでは板厚方位に電流を負荷するように2つの交差する電流負荷を考え,交差電流負荷による電位差測定によってはく離をモニタリングする手法を検討した.有限要素法解析を用いて,適切な電極配置を求め,実験的に実証試験をおこなった.その結果,交差電流負荷によって4電極法を用いても2電極法と同等程度の比較的高い精度ではく離の位置と大きさがモニタリング可能であることがわかった.さらに,多数の実験結果から応答曲面法によって電位差とはく離の位置や大きさとの関係を求める手法では実験コストが高くなることから,実験コストの削減を目指して有限要素解析による方法を検討した.有限要素解析では,導電率を実測結果から求め,はく離に伴う電圧変化を解析すると実測結果と大きく異なる結果となる.これは,実際には板厚さ方位の導電率のばらつきが非常に大きいこと,はく離面が接触していることに起因している.そこで,数回のはく離導入試験の実験結果を用いて実験結果にもっともよく一致するような等価導電率を誤差2乗和の最小化によって求め,この等価導電率を用いて有限要素法で多数の場合を解析し,その解析結果から応答曲面を求めてはく離の同定を行う等価導電率法を提案し,その有効性を実験的にCFRP梁試験片を用いて確認した.その結果,実験結果とよく一致する等価導電率を用いて解析した結果は新しい実験結果ともほぼ一致し,応答曲面から推定されるはく離の位置と大きさも実測値とよく一致することが明らかになった. 以上の結果および過去の結果から,CFRPのインピーダンス測定によって成形時の硬化度がモニタリングされ,成形後は電気抵抗変化からひずみ測定が可能となり,複数部分の電気抵抗変化からマトリックス割れやはく離がモニタリング可能であることが明らかになった.
|