Research Abstract |
電気や機械部品として使用された廃メラミン樹脂製品の粉末(#120)を用いて,SUS304に対する耐摩耗性および耐疲労性に及ぼす固体窒化処理の効果について実験的に検討した。 摩擦摩耗試験片(d=6.35mm)および疲労試験片(D=12mm,d=10mm,α=1.98)の窒化処理は,窒化容器に入れた試験片の表面積あたり1.7g/cm^2の廃メラミン粉末中に試験片を埋没させ,電気炉にて565℃,2時間加熱した後,空冷(摩擦摩耗試験片)および水冷(疲労試験片)を施した。摩擦摩耗試験はファレックス型試験機(290rpm,押し付け荷重465kg)により潤滑下で行った。疲労試験は小野式回転曲げ疲労試験機(1800rpm)を用い,室温大気中で実施した。 摩擦摩耗試験の結果,無処理試験片が摩擦距離約270mで焼付きを生じるのに対して,窒化処理した試験片は約960mに至っても焼付き現象は起こらず,摩擦係数は0.122となり,摩耗量も窒素化合物層内に留まり,著しい低摩擦性,耐摩耗性を呈すことが分かった。一方,回転曲げに対する疲労限度は,無処理試験片が263MPa,窒化処理試験片が440MPaとなり,固体窒化処理により疲労限度が約1.7倍向上し,疲労寿命も格段に延伸した。 さらに,本固体窒化技術を工業的に利用するために,ガス発生装置を備えた密閉型の実験炉について検討した。その結果,廃プラスチックを高温度域にわたって分解させて,発生ガスを十分に活用するとともに,必要に応じてガスの供給をコントロールし,また,熱分解したプラスチックの残査を少なくすることが可能になった。 以上のように,廃プラスチック固体窒化技術は,省資源,省エネルギーで,最も簡単な表面改質処理法であり,経済性に優れた高付加価値製品の開発に貢献できるものと考えられる。
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