2003 Fiscal Year Annual Research Report
分子の内部自由度と溶液の存在を考慮したモデルによる脂質分子膜の形状変動相転移
Project/Area Number |
15560160
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Research Institution | Ibaraki National College of Technology |
Principal Investigator |
鯉渕 弘資 茨城工業高等専門学校, 助教授 (00178196)
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Keywords | 分子膜モデル / 2次相転移 / 1次相転移 / 表面張力 / 曲げ弾性 |
Research Abstract |
1.膜の両側または片側たある水溶液の存在をモデルに取り込んだ2種類のモデルについて,分子動力学シミュレーションを行った。はじめのモデルは,膜の法線方向への膜分子の運動に付随して,水溶液分子が一緒に動くとするものである。このモデルからは,水溶液の存在を仮定しないもとのモデルにおける2次相転移が,水溶液の影響で強くなって1次相転移に変化するという結果が得られた。2番目のモデルでは,膜分子が動くとき,膜分子が速度に比例する粘性抵抗を受ける場合を研究した。この場合は,相転移の性質は粘性抵抗の大きさによらないという予想通りの結果が得られた。 2.膜を構成する膜分子の数が動的に変化するモデルの相転移を,グランドカノニカルモンテカルロ法で研究し,2次相転移が有限の曲げ剛性値で起こることを示した。 3.曲げエネルギーの新しい定義に基づく膜モデルに関してMC法で相転移について調べた。その結果,表面張力を持つモデルでも持たないモデルでも1次相転移が起こることを示した。この結果は,通常の曲げエネルギーのモデルでは2次相転移が起こるというよく知られている結果と合わせて,曲げエネルギーの定義の仕方によって相転移が変わるということを示したものである。一方,既に報告されている理論的研究の結果も,1次相転移の場合と2次相転移の場合があり統一されていない。本研究の結果もこれらの理論的研究の結果を反映したものと考えられる。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] H.Koibuchi, N.Kusano, A.Nidaira, K.Suzuki, M.Yamada: "Grand Canonical Monte Carlo Simulations of Elastic Membranes with Fluidity"Physics Letters A. Vol. 319, No. 1,2. 44-52 (2003)
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[Publications] 鯉渕 弘資, 草野 宣幸, 仁平 敦士, 鈴木 孔明: "粘性抵抗力を受ける膜モデルの分子動力学シミュレーション"日本物理学会2004年次大会講演概要集第2分冊. 361 (2004)
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[Publications] 仁平敦士, 草野宣幸, 鈴木孔明, 鯉渕弘資: "Monte Carlo Simulations of Branched Polymer Surfaces"第9回高分子学会計算機科学研究討論会講演要旨集. 28 (2004)
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[Publications] 佐藤功平, 仁平敦士, 草野宣幸, 鈴木孔明, 鯉渕弘資: "液膜の弦張力と界面張力の測定に関する数値的研究"機械学会関東支部第10期講演会講演論文集. 327-328 (2004)
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[Publications] 鯉渕弘資, 草野宣幸, 仁平敦士, 鈴木孔明: "水溶液の存在を仮定した膜モデルの分子動力学シミュレーション"日本物理学会2003年秋季大会講演概要集第2分冊. 322 (2003)
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[Publications] Hiroshi Koibuchi, Nobuyuki Kusano, Atsusi Nidaira, Komei Suzuki: "String Tension and Surface Tension of Elastic Membranes with Fluidity"Proceedings, The 3rd International Symposium on Slow Dynamics in Complex Systems. (In press). (2003)