2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15560165
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
小原 拓 東北大学, 流体科学研究所, 助教授 (40211833)
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Keywords | 液体(流体)潤滑 / エネルギー伝搬 / 分子間伝搬機構 / 固液界面 / ナノフルイディクス |
Research Abstract |
2つの固体壁面間にナノメートルオーダの厚さの液膜が存在する状態で固体が摺動して液膜にせん断を与える状況を想定して、液膜を構成する物質(分子種)や固体壁の構造(分子の配置)に様々なものを想定して分子動力学シミュレーションを実施した。すなわち、液体分子として並進運動の自由度のみをもつ単原子分子、最低限の回転自由度をもつ直線分子、複雑な分子間相互作用をもつ水を選択し、固体壁には白金の様々な結晶面((111)、(110)、(100)の各面)を想定し、これらの組み合わせによる系について固体壁を50〜100m/sでそれぞれ反対方向に動かして、固体壁から液膜への運動量の伝搬や、粘性加熱により液膜内に発生した熱エネルギーの固体壁への伝搬を解析した。固体壁の速度は、近年ナノ液膜による潤滑が大きな問題となっているハードディスクの周速度として典型的なものである。シミュレーションの結果、単原子分子や直線分子など固体分子との相互作用が比較的弱い液体分子の場合に、固液界面におけるエネルギー(熱エネルギー、流れの運動エネルギー)の伝搬特性が、固体壁面の分子スケールの構造に大きな影響を受けていることが明らかとなった。すなわち、熱エネルギーの伝搬に関係する分子の並進運動の3自由度は、等しくエネルギー伝搬に寄与しているわけではなく、固体分子が密に配置されている(111)面の場合は壁面に垂直な方向の自由度のみが寄与すること、分子列が多少の間隙をもって配置される(110)面の場合は、分子列に垂直で壁面に平行な方向の自由度が大きく寄与することが見出された。これは固体壁面の分子スケールの「粗さ」が分子の運動エネルギーの伝搬に大きな影響を与えることを示しており、この結果、マクロな流れの運動エネルギーあるいは運動量の伝搬も、せん断流れの方向と固体壁面の「粗さ」の方向との組み合わせで大きく変化し、スリップの大小が決定されている。
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Research Products
(6 results)