Research Abstract |
本研究では,(1)動的機器が必要,(2)上下固有振動数の下限が3Hz程度で阪神大震災のような長周期地震には対応できない,あるいは(3)3次元免震の弱点であるロッキング抑制が不十分であるなどの既提案の3次元免震の欠点を克服することを狙いとした,ギア機構を用いた新しい3次元免震システムを開発し,実用化のための基礎技術を構築することを目的としている. 昨年度は,応答変位,応答加速度に対する摩擦ダンパの効果,連結棒のロッキング抑制効果等を数値シミュレーションにより評価し,本システムの水平免震性能,上下免震性能,水平・上下同時加振時の免震性能を確認した. 本年度は,引き続き,数値シミュレーションによる応答評価を行うとともに,基礎実験による免震性能の確認を行った. 数値シミュレーションでは,阪神大震災の地震波のみでなく新潟中越地震波による応答評価も行い,各種スペクトル特性を有する地震波についても十分な免震性能を有することを確認した.また,摩擦力を利用した免震システムでは,上下地震動により摩擦力変動が生じるため,水平免震挙動と上下振動挙動は連成した応答を示すと考えられる.そこで,入力地震波の位相や振幅などをパラメータとした解析を行い,摩擦力変動が免震性能に及ぼす影響を明確にした. 基礎実験では,約4分の1の縮尺モデルを製作し,加振台を用いた上下振動実験を行った.2種類のギアシステムについて実験を行った.まず,ミニチュアウォームギアを用いた装置を作成し,免震性能の確認を行ったが,適切な減速比のミニチュアギアが入手困難であるため,非可逆性とスラスト荷重による摩擦力が大となり,免震性能の確認に至らなかった.そこで,減速機構として平歯車を用いた機構を考案し,復元力は渦巻きばねで与える構造とした.本システムのスケールモデルを制作し,上下加振試験を行ったころ,本システムは十分な免震性能を有することを確認した.
|