2003 Fiscal Year Annual Research Report
肺と肋骨の相対速度に着目したシートベルト張力制御装置の開発
Project/Area Number |
15560209
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Research Institution | Kanagawa Institute of Technology |
Principal Investigator |
川島 豪 神奈川工科大学, 工学部, 教授 (70186089)
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Keywords | 安全工学 / 自動車 / シートベルト / アクティブ制御 / 非線形制御 / 衝撃制御 / 胸部 / 変形制御 |
Research Abstract |
車両の衝突事故において、乗員の肺と肋骨、もしくは、脳と頭蓋骨の相対量を安全な値に制限できれば後遺症の発生が抑えられる。そこで本研究では、シートベルトの張力を瞬時にコントロールするアクティブシートベルトを提案した。これを実現するため、まず肺と肋骨の相対変位を許容値以下に抑えるスライディングモード制御系を構築、その制御性能を標準的な人間の胸部および一般的な乗用車の数値を用いた数値シミュレーションにより確認した。その結果、100km/hで剛体壁に衝突した場合でも肺の変形量を許容値以下に抑えられることを明らかにした。 次に提案されたアクティブシートベルトの実現性を確認するため実験模型を製作した。ばねで結合された2つのブロック(人間の胸部に相当:物体A)を斜め上方からリニアガイドに沿って落下させ、その先端を完全弾塑性に近い特性を示すプラスチック製ケース(車両のクラッシャブルゾーンに相当)を介して剛体壁に固定されたブロック(車両に相当:物体B)に設置された釣り糸(シートベルトに相当)に引っかけて衝突させる。そして、糸の張力を変化させることで物体Aの変形を制御させるもので、アクチュエータへの電源供給の関係から胸部に相当する物体Aのみを落下させる構造としている。アクチュエータは、静摩擦の影響を最小限に抑えるために斜めに配置された12本のローラーを釣り糸が巻かれたプーリーとディスクではさみ、そのディスクを圧電アクチュエータで押すことにより摩擦を制御して張力を変化させる構造である。各質点の変位はレーザー変位計により測定され、ADとDAコンバータを内蔵し、ART-Linuxにより実時間処理が可能なコンピュータを中心に制御系が構成される。1kHzのサンプリング周期で制御実験を実施した結果、胸部に相当する物体Aの変形を目標値に留まらせることができ、アクティブシートベルトの実現可能性を明らかにした。
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