2004 Fiscal Year Annual Research Report
極低損失ナノスケール多層磁性材の開発と高効率モータへの応用
Project/Area Number |
15560269
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
奥野 光 筑波大学, 大学院・システム情報工学研究科, 助教授 (10160813)
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Keywords | 磁性薄膜 / ナノ / 多層 / 鉄損 / 渦電流損失 / 磁区 / 磁壁 |
Research Abstract |
ナノスケール膜厚多層磁性薄膜磁心を、スパッタ装置により作製し、損失評価装置を用いて測定し評価した。損失の周波数特性曲線は、磁壁共鳴により130〜200kHz付近で最大となり、頂上崩壊を起こす事が確認された。この現象は、研究代表者によるモデルの計算機シミュレーションにより、磁壁がカオス運動を起こす場合に生ずる事が予想されており、今回、実験でも同様な結果が得られた。磁壁のカオス運動が生じると、頂上崩壊の場合には損失が低減するが、一方、カオスへの分岐図では損失が減少するばかりでなく増大する場合もあり、損失とカオスの関係は非常に複雑である。したがって、工学的には磁壁のカオス運動の範囲を調べるとともに、規則運動に制御する事により、デバイスの安定な動作範囲を確保するという考え方が必要になる。この目的でOGY、DFC等のカオス制御法の応用も試みた。また、磁壁運動速度に対応する誘起電圧波形の実測時系列データから、フィルタリング手法により種々のアトラクターを再構成した。誘起電圧の時系列から、励磁電圧の基本波と高調波に対応する周波数成分を除去して描いたアトラクターは、3次元位相空間で雲状の塊を形成した。構造をより詳細に調べるため、構造の可視化を行うツールとして、アトラクター上の各点間の相関関係をあらわすリカレンスプロットを描いた。その一部を拡大すると元の図と相似な図形が現れる、いわゆるフラクタル構造が認められた。磁壁運動が実空間では不規則に見えても、位相空間ではフラクタル構造という一種の規則性を持つことが分かった。このことから磁壁運動が、確率系でのランダム運動ではなく、確定系で生ずる不規則運動すなわちカオスであることが確認された。以上の結果、実験、理論両面から、磁壁のカオス運動と損失現象の複雑な関係がさらに明らかになり、より詳細な磁気損失モデル構築と損失低減のための資料が得られた。
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Research Products
(2 results)