2006 Fiscal Year Annual Research Report
極低損失ナノスケール多層磁性材の開発と高効率モータへの応用
Project/Area Number |
15560269
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
奥野 光 筑波大学, 大学院システム情報工学研究科, 助教授 (10160813)
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Keywords | 磁性薄膜 / ナノ / 多層 / 鉄損 / 渦電流損失 / 磁区 / 磁壁 |
Research Abstract |
ナノスケール膜厚多層磁性薄膜磁心の測定値、構築モデルとそれから導かれる計算結果に基づき、磁壁運動の相関次元解析、カオス分布図作成、カオス制御法の検討、磁気損失評価、内燃機関との比較検討結果を合わせて総合的な評価をまとめた。磁心の出力電圧時系列信号から、パワースペクトラムを求め、それから再構成したアトラクターの相関次元解析を行った。まず、相関積分C^m(r)を計算し、超球の半径rでスケーリングし、相関指数Gを求めた。Gと埋め込み次元mの関係から、Gが8.83という値に収束し、相関次元Dが8.83であることがわかった。磁壁の不規則振動は、非整数値の相関次元を持つことから、決定論的カオス現象であることが確認された。励磁界振幅-周波数空間におけるカオス分布図の作成により、大振幅-高周波、小振幅-低周波領域外に広く分布すること、また、カオス領域の下縁部境界は、磁壁共鳴領域で形成されることがわかった。さらに別の試料では、磁気モーメントの複雑で不規則な挙動が引き起こすピンクノイズによる磁気損失増大と考えられる現象を見出した。カオス状態の磁壁振動を規則振動に制御するために、遅延フィードバック法の改良を検討し、単数枚磁壁の場合、半周期改良遅延フィードバック法(HPEDFC)が最も制御性が良いこと、複数枚磁壁では、HPEDFCでのみ可制御であることがわかった。ナノスケール膜厚多層磁心を用いた力学系-電磁系エネルギー変換機器の変換効率に関して考察した。変換周波数増大による機器の体積と重量の低減曲線と、磁性体損失の増加曲線のクロスポイントは、現在の内燃機関の経済効率と競争するためには、数倍の改善余地があることがわかった。以上の成果を国際会議で発表し、磁気損失カオス理論に対する評価と、その応用である磁気損失低減方法と電磁エネルギー変換効率に対する国際的な視野での評価を受けた。
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Research Products
(4 results)