Research Abstract |
平成17年度は,サンプル値系のナイキスト安定判別法に基づくロバスト安定解析の理論の精緻化に力点をおき,研究を進めた. まず,前年度研究を行った周期時変スケーリングに基づくロバスト安定解析について,スケーリング要素をゲインと限らない動的な周期時変要素の場合も含める形に拡張して理論的検討を行った.とくに,簡単な例を通して,周期時変スケーリングが厳密なロバスト安定解析を可能とする場合があることを明らかにした.さらに,従来のサンプル値系のスモールゲイン定理に基づく解析や,μタイプの解析では,静的で時不変な不確かさに関するロバスト安定解析が,サンプリング周期が長くなるにつれていくらでも保守的なものとなってしまう場合があることを明らかにし,これにより,周期時変スケーリングの有効性を理論的にさらに実証した.一方で,連続時間制御系はサンプル値系の特殊ケースとして見ることができることから,サンプル値系において有効性が確認された周期時変スケーリングが,連続時間制御系においても有効であるか否かについても検討を行った.その結果,単純に予想され得る結果に反して,連続時間制御系に対しては,周期時変スケーリングは,従来の通常の時不変スケーリングに比べて,何ら有効性を発揮しないことを明らかにした.すなわち,周期時変スケーリングが有効となるのが,サンプル値制御系に特有の事柄であること,そして,このことは逆に,サンプル値系におけるより本質的なスケーリングが周期時変スケーリングであることを示唆していると考えられることを明らかにした. この他,制御対象のもつパラメータ不確かさのもとでのサンプル値系のロバスト性能の解析や制御装置の離散化などに関しても着実な研究成果を得ており,3ヵ年の研究計画をバランスよく達成した.
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