2003 Fiscal Year Annual Research Report
適応フィードフォワード制御アルゴリズムの構築と応用に関する研究
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15560385
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
佐野 昭 慶應義塾大学, 理工学部, 教授 (10051765)
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Keywords | 適応制御 / 適応同定 / 適応フィードフォワード制御 / OFDM伝送システム / プレディストータ / 非線形増幅器 |
Research Abstract |
フィードフォワード制御は,計測可能な信号情報を利用することにより制御性能を改善できることからその有効性はよく知られている.しかし制御対象のモデル精度に大きく依存するために一般的な状況下ではオンラインで適応的にフィードフォワード制御を安定に実現していくための方法論の構築には幾つかの未解決な課題があり,安定な実現を可能にする理論的枠組みを確立することが本研究の目的である.例えば,誤差システムのダイナミクスに不確かさが存在する場合には、現在はこれを実時間で同定する間接的な方法しか知られていない。本研究では、誤差システムの中に未知のダイナミクスが現れない新しい適応アルゴリズムの開発を行い,安定性を保証するための条件および収束動態の解明を行うこと、さらには非線形ダイナミクスをもつ場合への拡張、未知物理パラメータをもつフィードバック制御系をフィードフォワード型の適応同定アルゴリズムを適用できる新しい構造や方法論の開発、などを目的としている。本目的のもとで以下の成果が得られた. (1)マルチチャンネルの能動騒音制御システムにおいて,2次経路行列の同定とリンクした従来のFiltered-xアルゴリズムの考え方を利用しない新しいアルゴリズムを開発した.2種類の仮想的な誤差ベクトルを導入しこれをゼロにするための3つの多項式行列からなる適応フィルタ行列を調整する方法であり、主騒音ベクトルがPE性(広範囲の周波数成分を含む)を満たさない場合であってもキャンセリング誤差ベクトルを理論上ゼロにできるというこれまでにない優れた特徴をもつ。誤差ダイナミクスが2次経路となるFiltered-xアルゴリズムを用いていないためにロバスト安定な適応アルゴリズムになっている点に特徴がある。 (2)OFDM伝送系では、信号の電力変化が非常に大きいため増幅器の非線形歪みを受けやすく、伝送品質や隣接チャンネルへの漏洩が大きな問題となっている。本研究では適応フィードフォワード制御の立場から、前置き補償器すなわちプレディストータを適応的に実時間で構成する二つのアプローチを明らかにした。一つは、適応同定を実数計算で実現する方法、他方はモデルマッチングを適応的に実現する適応制御による方法である。特に後者の方法は、歪みを受けやすいOBOやIBOの低い場合について補償性能が優れていることを明らかにした。 (3)MRダンパーを用いた構造物の免震制御を適応フィードフォワード制御により実現する方法を明らかにした。MRダンパーは非線形であり、これを適応観測器と適応同定を組み合わせた方法によりMRダンパの逆システムを実時間で構成する方法を与え、実験により提案の非線形モデルの妥当性を明らかにした。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] Jingmin Xin, Akira Sano: "Computationally efficient subspace-based method for direction-of-arrival estimation without eigendecomposition"IEEE Trans. Signal Processing. Vol.52, No.4. 876-893 (2004)
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[Publications] 丁 元明, 佐野 昭: "非線形増幅器の時間域適応歪補償アルゴリズム"電気学会論文誌C. 124C, No.3. 861-869 (2004)
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[Publications] 丁 元明, 佐野 昭: "適応同定による非線形増幅器のプレディストーション"システム制御情報学会論文誌. Vol.17、No.1. 48-56 (2004)
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[Publications] 佐野 昭: "システム同定と適応音場制御"ふぇらむ(日本鉄鋼協会誌). Vol.8、No.9. 642-647 (2003)
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[Publications] Jingmin Xin, Akira Sano: "Direction-of-arrival tracking of coherent cyclostationary signals in array processing"IEICE Trans. Fundamentals. E86-A, 8. 2037-2046 (2003)
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[Publications] Lianming Sun, Yuanming Ding, Akira Sano: "Identification-based predistortion scheme for high power amplifiers"IEICE Trans. Fundamentals. E86-A, No.4. 874-881 (2003)