Research Abstract |
自動車の加速或いは減速時には,タイヤと路面との摩擦係数が走行性能に大きく影響する。雨や雪の日には摩擦係数が小さくなり,タイヤが空転して加速できない,或いはブレーキをかけてもスリップして車体の減速ができないという現象が生じる。このようなタイヤの空転現象に対して,現在は運転者のテクニックで対応,或いはファジー制御や線形制御理論を用いて,すべりが少なくなるような制御装置を設計しているが,非線形項であるタイヤと路面との摩擦係数の変動を積極的に考慮に入れておらず,より性能の高い制御システムを構築し,車の安全性,燃費を高めるためには,非線形項であるタイヤと路面との摩擦を積極的に考慮したシステムの構築が必要不可欠である。一方,自動車の駆動制御には駆動トルク,車輪の回転速度,車体の対地速度が必要であるが,これら3つの状態変数のうち車体の対地速度を測定することは困難である。そこで,外乱オブザーバを用いた推定値が代わりに用いられることが多い。しかし,実際の対地速度の代わりに,この推定値を用いた場合の制御系の安定化は明らかにされていない。 そこで,平成15年度の研究では,推定系の応答が十分に速いとき,制御系と推定系を分離できる変換行列を考案した。これは,外乱オブザーバの推定値をフィードバックした制御系において,従来困難であった制御系と推定系の分離を可能としたものであり,同様な制御対象への応用が可能である。本研究では,この結果を用いて,スライディングモード制御系を設計し,シミュレーションによりその安定化を確認した。
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