2003 Fiscal Year Annual Research Report
相互作用系として捉えた河川-沿岸域間の動的水環境形成機構解明と河口機能の評価
Project/Area Number |
15560441
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
八木 宏 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 助教授 (80201820)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
木内 豪 (独法)土木研究所, 主任研究員
神田 学 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 助教授 (90234161)
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Keywords | 潮流 / 浮泥 / 干潟 / 流動モデル / 水温 / ノリ養殖施設 |
Research Abstract |
本研究では,これまで個別に検討されることが多かった河川と海域を一体として捉え,その相互作用によって形成される動的な水環境特性の実態を現地観測ベースで把握し,それに基づいて河川-沿岸域系連成モデルを構築することを目的にしている.今年度は,有明海湾奥部を対象に現地調査及び数値モデルの構築を行った.有明海湾奥部には,筑後川,六角川などの比較的大きい河川が流入しているが,大潮時には5mを越える潮汐により,大量の海水が河口域に流入し,強い潮流を介して内湾域と河口域は密接に関係しており,河川-沿岸域の相互作用系を考えることが重要な領域である.現地調査は,河川から流出した物質が干潟域を介してどのように内湾域に流出するかを把握するために,(1)有明海湾奥部干潟域(4観測点)の長期水質・海況連続モニタリング(流況・塩分水温・波高・潮位・濁度・クロロフィルa量),(2)筑後川・六角川河口〜湾奥干潟域(10観測点)の広域多点濁質フラックス計測を,(3)ノリ養殖施設流体力計測を実施した.計測結果から,基本的な濁質輸送フラックスの特徴が把握し,さらにそれに影響を及ぼすと考えられているノリ養殖施設の流体抵抗を抵抗係数として定量的に評価した.次に,数値モデルについては,浅水乱流場を合理的に表すSDS-Q3Dモデルをベースとして,有明海全体の大局的な流動から干潟や澪筋といった微地形による詳細な流れの構造まで把握できるように2段階ネスティング型とし,また干潟域の干出に対応するように移動境界を導入した形で構築した.これに,現地計測から得られたノリ養殖施設の流体力を抵抗係数として実海域のノリ養殖施設占有率に基づいて与え,潮流とそれによる浮泥輸の数値シミュレーションを行った.計算結果から,筑後川,六角川河口海域を中心として,特に澪筋部分に大きな残差流が発生し,浮泥の輸送が顕著であること,澪筋の両岸には収束帯が発生し粒子が集積しやすい構造であることがわかった.これにノリ養殖施設の効果を導入すると,流速,浮泥ともにノリ養殖域外縁を中心として10%程度減少すること,さらにLagrange的な粒子追跡計算からノリ養殖施設による抵抗の空間分布が水平混合を増大させることがわかった.
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