2005 Fiscal Year Annual Research Report
モクズガニの生活史に着目した河口域における密度流の構造と魚道の機能評価
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15560450
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Research Institution | Gifu National College of Technology |
Principal Investigator |
和田 清 岐阜工業高等専門学校, 環境都市工学科, 教授 (50191820)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小出水 規行 独立行政法人農業工学研究所, 生態工学研究室, 主任研究員 (60301222)
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Keywords | 感潮域 / 魚道 / 塩水楔 / モクズガニ / メガロパ幼生 / 浮遊・着底・変態 / habitat / 沿岸域生態系保全 |
Research Abstract |
本研究は、モクズガニの生活史(メガロパ幼生〜稚ガニ〜親ガニ)に着目して、塩水遡上などの水理特性と関連づけ、せせらぎ魚道におけるモクズガニの生息分布やメガロパ幼生の着底・変態状況、生息場の特性を現地調査から明らかにし、感潮域における魚道の評価をしたものである。 平成15年度の調査によって、せせらぎ魚道の詳細な地形情報、潮位、流速および密度分布(温度、塩分濃度)などの水理特性、メガロパ幼生の着底場所と最盛期がほぼ明らかにされた。平成16年度の調査では、約2週間〜1ヶ月ごとの稚ガニトラップのサンプリング調査結果を継続し、塩水遡上という汽水域特有の環境条件が、各魚道における付着藻類、水生動物相(モクズガニを含む)の生息分布に対してどのような影響を及ぼしているかの調査を実施した。平成17年度は、これらのサンプリング調査を継続し、さらに、生息場創出の観点から中空ポーラスコンクリートを設置して、その利用状況を把握した。 本研究で得られた成果は以下のようである。1)クラスター分析などにより、塩水遡上の影響範囲(常時遡上域、大潮時に遡上域、非遡上域)は、付着藻類(藍藻・珪藻・緑藻)、底生動物(節足・環形・軟体など)の生息分布や構成比などと密接に関連し、汽水域特有の生息場が形成されている。2)さらに、回遊性甲殻類のモクズガニの甲幅サイズの分布特性から、せせらぎ魚道内において稚ガニの生息密度が高くなるなどの時間・空間的変動が見られる。3)個体数の少ないほど平均的な甲幅サイズは大きくなる傾向があり、この個体数が少ない場所は瀬に対応するなど、稚ガニに関する水深や流速などの水理特性の選好性(PHABSIM適性曲線の適用)や餌料生物環境と関わっている。4)メガロパ幼生から変態した稚ガニは甲幅約7mmに達すると淡水域に侵入して上流へ遡上を開始し、甲幅20mm前後になるとかなり上流部まで遡上するといわれているが、魚道出口付近には甲幅20mmを超える稚ガニが数個体確認された。このことは上流域へ向かって遡上する個体群と魚道周辺や湛水域に越冬して一定期間生息する個体群に大別され、回遊性甲殻類のモクズガニの稚ガニは、この魚道周辺を生息場として利用している可能性がある。5)中空ポーラスコンクリート内で脱皮する数個体が確認され、汽水環境の特徴を活かした河口域生態系保全策の一つとして有効性が確認された。
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Research Products
(6 results)