Research Abstract |
交通施設の時間短縮便益計算において原単位として用いられる時間価値は,現行の道路投資評価マニュアルにおいては所得接近法に基づいて設定されている.しかし,時間が全て労働に充てられるという考え方には疑問の余地があり,特に,労働が営まれない休日の場合,労働と余暇のこうした関係は現実的ではない.本研究では,対象行動の時間と費用のトレードオフ関係から休日における諸活動の時間価値を定式化し,平日の時間配分結果や活動状況に対する心理的ニーズの影響を考慮して活動時間価値の推計を行うことを目的とする. まず,個人の休日における生活行動を,ミクロ経済学の効用最大化理論に基づく時間配分モデルとして定式化し,さらに,個人が平日に行った活動成果や,平日行動と休日行動との関係から規定される潜在的なニーズを考慮するために,平日から休日への影響そのものについての潜在変数モデルを構築し,それを時間配分モデルの中に組み込んだ. 次に,時間価値推計に必要な実データ取得のために横浜市内で意識調査を実施し,アクティビティダイアリー・個人属性・休日行動における主観的評価値等の情報を取得した.これらのデータをもとに,潜在変数モデル・時間配分モデルのパラメータ推定と活動時間価値の推計を行った.潜在変数モデルの推定結果からは,平日の活動時間の結果が休日に対するニーズに大きく影響していること等が確認された.また,時間配分モデルからは,人々は心理的ニーズの影響を受けて,休日にはレジャー活動などに時間を多く配分しようとする傾向等があることが示された.また,推計した活動時間価値は,数十円から数百円という値を中心に分布し,個人間や活動間で大きく異なることが判明し,さらに,平日に仕事等で忙しい個人は,レジャー活動などの休日に行うニーズの高い活動において時間価値が高いこと等も確認された.
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