Research Abstract |
建物の建設工事に伴うCO_2の排出量が,全産業における排出量の10%を超える中,建物の長寿命化は建築分野に対する社会的要請であり,また,建築に携わる者の社会的責務でもあるが,従来の構造設計法には供用期間の概念が無く,新たな構造設計法/性能評価法が必要となる。信頼性理論に基づく限界状態設計法は,供用期間,目標性能水準,荷重や耐力の不確定性を反映した安全率(荷重・耐力係数)」を採用している。荷重・耐力係数の実用的算定法として,目標性能を考慮した荷重・耐力係数のでは,基本変数がすべて対数正規変数ならば,荷重・耐力係数は解析的に表現されることを利用し,荷重強さの確率分布関数を対数正規近似する方法が示されていが,安全性評価における基準期間は50年に固定されており,このままでは長寿命化に対応できない。 任意の基準期間(n年)に対応した荷重耐力係数を精算するためには,(1)n年最大値の確率分布関数の評価,(2)確率分布関数の逆関数の評価,(2)正規確率分布関数の対数の評価,従来の略算法では,対数正規近似等が必要となり,実用上煩雑であるが,本研究では,それぞれについて略算式を提案し,任意の基準期間,目標信頼性に対応した荷重・耐力係数を簡便に算定する手法を示した。対数正規近似を避けることで,従来の方法に比べて精度も向上し,安全率を10%程度減少させることができる。さらに,荷重効果や耐力を表す確率変数の相対的な「重み」を示す分離係数の略算法について,その精度を検討し,分離係数の評価精度についての安全率の意味を明確にした。 次年度は,長寿命化の際に無視できなくなる劣化の影響を簡便に評価する劣化影響係数のより簡便な評価方法を検討するとともに,劣化の不確定性を考慮しながら,今年度の荷重・耐力係数の略算法と統合することで,長寿命化に対応した実用的な信頼性設計法および性能評価法の構築を図る。
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