Research Abstract |
屋根形式の複合炭素短繊維補強コンクリートシェル構造を対象として,シェル耐力および破壊形態を検証するため小型実験供試体を作製し破壊実験を行った。併せて,供試体を忠実に再現した数値モデルを構築し,シェル耐力の検証を行った。 数値解析に於いては,薄肉モデルの扱いに特に注意が必要となり,シェルの板厚変動の影響を忠実に反映した数値解析を実施した。繊維補強コンクリートシェル構造に於いては小型実験供試体を作製する際に,板厚変動を最小限に抑制しようとする意図と,コンクリートの流動性を増大し炭素短繊維の均一な分散を促す作用とは,相互に相異なる手段を要する。従って,通常の鉄筋コンクリートシェルの供試体製作とは異なる特別の配慮が要求されるが,適切なコンクリートシェル耐力評価の立場からは,シェル板厚に比較的大きな変動分布が検出された場合に於いても,その影響を的確に考慮した耐力評価法を提案し,精度の高い数値解析の実施を目指した。 一般にシェルの設計に於いて,構造耐力を大きく作用する因子として,上記に加えて,境界条件及び荷重条件を適切に考慮しなければならない。本研究に於いては,境界条件として,シェルの剛性と力の流れを明確に評価し,破壊実験と非線形数値解析の対応において明快な処理を行うことができるように,モデル化を行った。 平成18年度は,本年度の破壊実験においては,鉄筋コンクリート造,炭素短繊維補強コンクリート造,炭素繊維シート補強による鉄筋コンクリート造,並びに複合炭素繊維補強コンクリート造の4種を対象として,シェル中央部1点集中荷重による載荷実験を行った。本年度は,過去3年間の実験資料による検討を考慮して,複合炭素繊維補強コンクリートシェル構造の耐力を実験的及び数値解析的に明らかにし,総合的に判断し,複合炭素繊維補強における,炭素繊維シート及び炭素短繊維補強の相互作用効果を明確にした。
|