2004 Fiscal Year Annual Research Report
我が国の建築生産における品質管理の史的展開に関する研究
Project/Area Number |
15560539
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
片野 博 九州大学, 芸術工学研究院, 教授 (60038966)
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Keywords | 建設業 / 昭和前期 / 企業統制 / 行政指導 / 産業統制組合 |
Research Abstract |
今年度の研究は、2つの部分から構成されている。一つは、我が国における建設業取締りの実質的責任者であった旧商工省伊藤憲太郎技師の所蔵していた当時の関係資料が発見されたことから、この資料を用い、従来は全く不明であった建設業所管官庁の変遷を明らかにすることにある。そして、昭和の初期までは警察による取締り規則の中で規制が行われていたが、その後は建設資材の関係で商工省に所管が移り、商工省の後は企画院、軍需省(以上は戦時まで)、戦災復興院、建設院、そして建設省への変遷が解明できた。しかしながら担当官としては一貫して伊藤技師の参画が認められ、事務の継続性は妥当しても、産業としてみた場合には行政的扱いが貧弱であったことが分かる。また、この伊藤資料は、商工省の公開分だけでなく、行政官としての草案を含むのであり、戦前におけるに建築業界を統制する行政上のプロセス(起案、草案、規則制定)の流れの中で、中央官庁間、中央と地方の関係が明らかになった。 もう一つの部分は、商工省伊藤技師の資料とも関係するが、企業統制と建設業界の再編に係るもので、終戦までは全国、各県協同組合化によって行われた。周知のように戦時体制に入って重要産業は早々と統制化の道を辿ったが、主要産業に認知されていない建設業は昭和13年に「土木建築請負組合法」が廃案になったことも関係し、かなり遅れて統制が実施された。さらに、統制にあっても、従来独自の調達システムを保持していた陸軍・海軍相互の業者獲得の確執、軍以外の工事担当部局(商工・軍需省)に対する圧力など権力(覇権)関係の網引きの中で協同組合化が推進されてきた。 戦時にとられた建設業の統制は、受注と生産の効率化、資材配給により業界を拘束するものであったが、それまでに未産業として看過されてきた斯産業に対する行政指導の立場が確立であったともいえる。このような結果を経て昭和24年の建設業法制定に辿り着いた。
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Research Products
(2 results)