2003 Fiscal Year Annual Research Report
合金超微粒子におけるマルテンサイト変態の結晶学的及び熱力学的研究
Project/Area Number |
15560574
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Research Institution | Osaka Women's University |
Principal Investigator |
唯木 次男 大阪女子大学, 理学部環境理学科, 教授 (90029885)
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Keywords | マルテンサイト変態 / 合金ナノ粒子 / サイズ効果 / 結晶構造 / 透過電子顕微鏡観察 / 電子回折 |
Research Abstract |
本年度は,1)以前にFe-NiおよびAu-Cd合金ナノ粒子のマルテンサイト変態に関する実験で得た知見を熱力学的に考察し,また,2)アルコール還元法による合金微粒子の有機合成を試みた。 1)Fe-NiおよびAu-Cd合金ナノ粒子のマルテンサイト変態は変態前後の結晶構造の点ではバルクと変わらないが,変態温度に関しては大きな変化があり,いずれの合金系においても,ナノ粒子の変態温度はバルクに比して著しく低い。しかしながら,Fe-Ni系では,母相とマルテンサイト相の熱力学的平衡温度,T_0温度,は大差なく,これに対して,Au-Cd系ではT_0温度が大きく低下する。このような相異が生じる熱力学的条件を提示した。すなわち,Au-Cd系では(Δs^<p→M>)_<bulk><(Δs^<p→M>)_<particle>のとき、Fe-Ni系では、(Δs^<p→M>)_<bulk>【approximately equal】(Δs^<p→M>)_<particle>で、かつ、(Δh^<p→M>)_<bulk>【approximately equal】(Δh^<p→M>)_<particle>である。ここで,Δs^<p→M>,Δh^<p→M>はそれぞれ母相からマルテンサイト相へ変態する際のエントロピー,エンタルピーの変化量である。 2)Sunら(S.Sun et al., Science(2000))の方法に従い,鉄ペンタカルボニル(Fe(CO)_5)の熱分解と白金アセチルアセトネート(Pt(acac)_2)の1,2-ヘキサデカンディオールによる還元をデオクチルエーテル溶媒中で行うことにより,Fe-Pt合金微粒子の合成を試みた。Fe(CO)_5とPt(acac)_2の配合モル比,還流温度および時間を種々設定し,その都度,TEM観察と電子回折により評価した。as-grown試料は還流時間に依存して,2,3nmから数十nmの比較的粒径の揃った微粒子からなっていた。電子回折図形に現れた回折リングは,マグネタイト(Fe_3O_4),少量の白金を含む鉄および少量の鉄を含む白金からのものとして説明できた。薄膜EDXスペクトロメトリーにより調べたas-grown試料の組成はFe(CO)_5とPt(acac)_2の配合モル比にほぼ等しいことがわかった。これらの結果はSunらの結果と異なるように思われるので,さらに検討する必要がある。
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Research Products
(1 results)