2003 Fiscal Year Annual Research Report
電子波動関数の変化・応答特性に着目した超伝導転移温度の評価
Project/Area Number |
15560607
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
高原 渉 大阪大学, 大学院・工学研究科, 助手 (10252602)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
南 二三吉 大阪大学, 大学院・工学研究科, 教授 (60135663)
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Keywords | 超伝導転移温度 / NaCl型化合物 / 窒化物 / DV-Xα法 / 分子軌道 / 波動関数 / 原子変位 / 化学結合 |
Research Abstract |
超伝導物質探索の指針を得るためには、結晶構造の違いを越えた電子状態の特徴を見いだすことが重要であるが、有機化学反応の分野では、同じ機構で反応する分子がその構造の違いを越えて同型の軌道を作る傾向があることが指摘されている。本研究では、材料物性自身を固体凝縮系化学反応現象とみなし、ある結晶構造下での電子状態というよりも、むしろその結晶構造から積極的に原子を変位させたときの、電子状態の変化・応答特性を知ることに主眼を置いて超伝導転移温度を評価する。Ti、V、Zr、Nbで、超伝導転移温度が既知のNaCl型構造の窒化物、炭化物、酸化物、硼化物を対象として、M_<14>X_<13>クラスターモデル(M=Ti,V,Zr,Nb、X=N,C,O,B)を設定し、モデル中心のX原子のみを変位させたときの分子軌道関数の変化特性をDV-Xα分子軌道法により調査し、それと超伝導転移温度との対応関係を検討した。原子変位に伴い、中心のX原子と周囲各M原子とのBond Overlap Population(BOP)は変化する。原子変位によりBOPには偏りが生じるが、それを比で表すと、特に窒化物で、その比が大きく変化する原子変位のときに、超伝導転移温度値の大小関係とBOPの比の大小関係に対応関係が認められた。超伝導現象は、磁気的相転移や構造相転移を起こす境目でよく観察されており、この結果は、物質・物性の安定・不安定性と超伝導機能発現との密接な関係を反映したものであると考えられる。波動関数の変化・応答特性と物性との密接な関連性については、物質をどう捉えるかという物質観にも係わる問題である。今後は、「要素自身の状態変化を伴わない相互作用は無い」、すなわち、「要素自身の状態変化を伴って、はじめて、その要素からみて相互作用(関係性)があると言える」を基本原理として、化学結合の意味や物性の意味を捉え直すことが重要である。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] 高原渉: "窒化ケイ素セラミックスの高温強度特性に及ぼすCa元素の影響について -化学結合における歴史性-"DV-Xα研究協会会報. Vol.16No.2. 264-268 (2003)
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[Publications] 高原渉, 岡田博之, 南二三吉: "窒化ケイ素の力学特性に及ぼす添加元素の影響についての電子論的検討"日本金属学会秋期(第133回)大会講演概要集. 479 (2003)