Research Abstract |
交付申請書の記載にしたがい,以下の2種類に分類して,それぞれ概要を記す。 [非平衡開放系での自己組織化原理を用いた自発流動の秩序化] 本年度は,分光学的測定により,自発流動の発生原因の一つとなっている化学反応の反応式を特定することを試みた。その結果,有機溶媒の中で,ヨウ素がポリアニオンとなってイオン化していることが必要であることが明らかとなった。このため,有機溶媒には,ある程度の極性が必要であり,言い換えれば,極性分子からなる有機溶媒であれば,従来用いられてきたニトロベンゼン以外のものでもよいことがわかった。さらに,界面活性剤の吸着による固体壁面の疎水性の周期変動と連関した,油水界面張力の非線形的振動が存在し,それが,溶液の運動に本質的に関与していることを見出した。これは,この溶液系の自発運動の発生機構解明にとって,きわめて重要な知見であることがわかった。また,壁面での界面電位の測定を行い,当初計画にあった電場による流体運動制御についての重要な情報を得た。 [非平衡開放系での自己組織化原理を用いた無機固体材料の構造設計] 本年度は,ゲル媒体のもつ物理化学的特性が粒子形成に及ぼす影響に着目し,それを中心に研究を進めた。その結果,イオンが反応してコロイドを形成する際,ゼラチンがコロイド形成部に濃縮される,一種の相分離が発生することに着目し,これが,ゼラチン中でのイオンの拡散,移動に大きな特異性を与えていることを見出した。また,当初計画に記載のとおり,(Ba,Sr)SO_4以外の反応拡散系を用いて,より応用面で意義のある粒子合成への展開を図るため,磁性粒子を視野に入れて,(Fe,Cu)(OH)_nの反応拡散系による合成を試みた。その際,上記の効果により,FeとCuの物質移動に特異な現象が発生し,これが,粒子形成に極めて本質的な影響を与えていることを明らかとした。
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