Research Abstract |
交付申請書の記載にしたがい,以下の2種類に分類して,それぞれ概要を記す。 非平衡開放系での自己組織化原理を用いた自発流動の秩序化 とくに,ニトロベンゼン/カチオン性界面活性剤水溶液系で発生する自発秩序運動について,前年度までに,固体壁面でのメニスカス形状(濡れ)の周期的変動が発生する物理化学的原因について明らかとしたが,今年度は,その濡れの周期的変動が,どのように巨視的な秩序流れを生み出すのかについて,機構を解明した。その結果,固体壁面での油水接触角の周期的変化に,油水液面の液位変化が影響することで,"油水接触角は瞬間的にYoungの式を満たすが,毛管-重力効果で決まるメニスカス形状は,安定な形を回復するのに対流を必要とする"ことが,本質的な理由であることがわかった。この対流は,固体壁面のあらゆる場所で同じように発達するわけではない。固体壁面上のある位置で獲得された安定なメニスカス形状が,固体板/水/油の3相接触線のkink状形状の伝播として他に影響し,全体の毛管-重力バランスが回復される。これが,壁面に沿う秩序流れの発生の基本機構であり,これに,壁面の親水性/疎水性の周期的変化が影響することで,観測される巨視的な波に発達することがわかった。 非平衡開放系での自己組織化原理を用いた無機固体材料の構造設計 本年度は,ゲルとしてゼラチンの他に,寒天,シリカゲルを用い,また,(Ba,Sr)SO_4固溶体の他に(Ca,Mg)CO_3固溶体を用いて,ゲル中の反応拡散機構が,どのようにして,微粒子中に秩序だった化学組成の分布や,規則的な物理的構造を生み出すのかについて,幅広く検討した。それらの結果,ゲルは,2種類のカチオンの相対的な拡散速度を変化させてしまうため,溶液の反応物濃度や温度,反応時間が同じでも,粒子構造におけるゲルによる多様性が生まれることがわかった。さらに,秩序だった組成分布が発生するためには,固溶体中のイオンの組成比が,ある一定値に達すると,安定な結晶構造が変化してしまうことが,基本的な要因であることを明らかとした。本年度の交付申請書に記載のように,反応物の濃度,ゲルの種類,反応時間の影響を表わすための,マップを得ることに成功し,反応拡散機構が構造性微粒子を生み出す,普遍的な機構を解明するための,有力な仮説を得ることができた。
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