2003 Fiscal Year Annual Research Report
有機無機ナノ構造を利用したチューナブル分子認識環境光触媒の機能開発
Project/Area Number |
15560667
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
犬丸 啓 広島大学, 大学院・工学研究科, 助教授 (80270891)
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Keywords | 分子認識 / 環境浄化 / 内分泌攪乱物質 / ノニルフェノール / メソ多孔体 / ナノ多孔体 / 疎水性 / ナノ構造 |
Research Abstract |
高濃度の共存物質に阻害されることなく低濃度有害物質を除去するには,分子認識機能が不可欠である.我々は先に,メソ細孔シリカのナノ空間を有機修飾した有機無機複合体が,代表的な「環境ホルモン」であるノニルフェノール(NP)分子を選択的に吸着除去できることを報告した.これは,有機修飾によりナノ空間内に極めて疎水的なナノ空間を構築したため,疎水ナノ空間と無機親水表面の組み合わせによってできるナノ構造に有機無機協奏分子認識といえる機能が発現したといえる.本研究では,このナノ構造の分子認識場をさらに解析するとともに,光触媒機能との組み合わせを視野にいれた研究を行った. オクチル修飾した多孔体の水吸着等温線を室温で測定すると,水の毛管凝縮が起こらない.ペンチル修飾体はナノ空間に水が凝縮する.窒素吸着では細孔内に分子吸着可能なナノ空間が修飾前の細孔容積の約半分検出される.つまりオクチル基の場合,極めて高い疎水性を持つナノ空間がかなりの総体積で実現している.これをさらに分光学的に動的挙動を含めて調べるため,試料に液体の水を滴下した状態での固体NMR測定を行った.アルキル鎖の炭素CP-MAS固体NMRを測定したところ,ペンチル修飾体では消滅していた末端炭素のシグナルが水添加直後の測定から強く現れた.これは,水がすぐにナノ細孔に侵入したことを示す.水侵入によりアルキル基の熱運動が抑制されたと考えられる.一方,オクチル修飾体では水添加直後の末端炭素のシグナルは弱く,水添加後24時間後の測定で,末端炭素のシグナルが強く観測された.これは,オクチル修飾体への水の侵入は,平衡論的には起こるものの,極めて遅い,ということを示している.このことは,疎水的な分子を細孔内に濃縮する上で極めて重要である.次年度は,光触媒機能との複合化を軸にさらに研究を進める.
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Research Products
(2 results)
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[Publications] 犬丸 啓: "有機・無機複合ナノ材料の環境浄化機能"ペトロテック. 26・10. 102-104 (2003)
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[Publications] K.Inumaru et al.: "Organic-Inorganic Cooperative Molecular Recognition in Alkyl-grafted MCM-41"Chemistry Letters. 32・12. 1110-1111 (2003)