Research Abstract |
薄い膜面から成るゴサマー宇宙構造物の運動を予測する数値解析コードを開発し,現在,宇宙航空研究開発機構が検討しているソーラーセイルの構造動力学解析を行なった.具体的には,剛体に巻きつけられた膜面をスピンにより展開する際の展開挙動および展開後の残留振動の解析を行なった.その中では,膜面同士の接触や膜面と剛体との接触の数学モデルを提案し,その有効性を数値解析により示した.そして,解析により,膜面の展開挙動に対する,(1)膜面の非常に小さな圧縮剛性,(2)展開角速度,(3)膜面の大きさ,等,様々なパラメータの影響を定量的に明らかにし,整理した.そして,それらの結果を踏まえ,膜面の展開運動を評価するための指標,すなわち,(1)展開率,(2)累積歪エネルギ密度,(3)最大歪エネルギ頻度を提案し,これらの指標により膜面の折り畳み方式や展開方法の比較・評価を行なうことができることを示した.この他,地上試験の問題点,すなわち,空気抵抗の影響も明らかにし,ゴサマー宇宙構造物の開発には微小重力実験が不可欠であることを示した.また,微小重力試験方法についても検討した.さらに,より簡単に膜面の運動解析を行なうために,膜面をバネ・マス系で近似する理論を構築し,膜面モデルとバネ・マスモデルとの数値計算結果を比較することにより,近似理論の妥当性を示した.これらの数値解析結果は,ソーラーセイルの実機の開発に直接役に立つ情報であり,この解析を通して,本研究がゴサマー宇宙構造物の開発に有効であることを示した.この他,開発した解析コードの汎用性を評価するため,パラフォイルの運動や昆虫の羽根の展開の解析など,ゴサマー宇宙構造物以外の膜面構造物の計算も実施している.現在,膜面の展開運動を精度よく予測する解析ツールは研究代表者が開発したツールのみであり,マニュアルの整備も含め,このツールを汎用コード化する作業を行なった.
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