2005 Fiscal Year Annual Research Report
モンシロチョウ属の食性の進化に及ぼす寄生蜂の影響に関する研究
Project/Area Number |
15570023
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Research Institution | Kyoto College of Medical Technology |
Principal Investigator |
佐藤 芳文 京都医療技術短期大学, 診療放射線技術学科, 教授 (80215871)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大崎 直太 京都大学, 大学院・農学研究科, 助教授 (70127059)
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Keywords | キレハイヌガラシ / コンロンソウ / エゾスジグロシロチョウ / ジグロシロチョウ / 寄主植物選好 / 天敵真空空間 / 帰化植物 / 種間競争 |
Research Abstract |
北海道には近年侵入したオオモンシロチョウを除くと、モンシロチョウ属のチョウはモンシロチョウ、エゾスジグロシロチョウ、スジグロシロチョウと三種生息し、野生のアブラナ科植物をめぐるすみわけがみられる。これまでの調査で、エゾスジグロシロチョウは帰化植物であるキレハイヌガラシが生育しているところではキレハイヌガラシを利用し、生育していないところでは土着種のコンロンソウを利用していることが明らかになった。今年度は、キレハイヌガラシの分布していない地域のチョウの産卵選好性がどのようになっているのかに焦点をあてて研究した。 羽幌、旭岳、朝里峠、大沼など広く調査し、いずれもキレハイヌガラシの群落がないことを確認できた地域からエゾスジグロシロチョウおよびスジグロシロチョウの成虫を採集した。野外に1×1×1.8mの網室を3基設置し、コンロンソウ2鉢、キレハイヌガラシ2鉢を入れ、雌成虫を放した。個体によって、産卵選好性に大きなバラツキがあったので、そのバラツキを表現できるように、バラツキ毎の頻度を求めた。各地域、1日20卵以上産んだ30個体について集計したところ、エゾスジグロシロチョウは高頻度にキレハイヌガラシを選択する個体が多かった。一方、スジグロシロチョウはコンロンソウを高頻度に選択する個体が多かった。これはデータの得られた大沼、白井岳、旭岳の3ケ所ともに共通していた。キレハイヌガラシが生育している地域のエゾスジグロシロチョウが100%キレハイヌガラシを選び、コンロンソウに産卵する個体がなかったという昨年までの結果と対照的であった。 この結果は、キレハイヌガラシが侵入したのち、エゾスジグロシロチョウは素早く寄主を転換したことを支持すると同時にキレハイヌガラシ上での二種の競争が存在し、エゾスジグロシロチョウが競争に勝った結果、現在のすみわけが成り立っていることを推測させる。
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