2003 Fiscal Year Annual Research Report
世界遺産春日山原始林における移入種の分布と植生景観の変遷・保全に関する研究
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15570024
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Research Institution | Nara Saho College |
Principal Investigator |
前迫 ゆり 奈良佐保短期大学, 幼児教育科, 助教授 (90208546)
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Keywords | 春日山原始林 / 移入種 / ニホンジカ / 植生構造 / 生物撹乱 / 照葉樹林 / 生物多様性 / 生態系 |
Research Abstract |
本研究は,高密度化するニホンジカ(天然記念物)の影響を大きく受けている世界遺産・特別天然記念物春日山原始林(照葉樹林)の保全に向けて,1)移入種としてその分布及び拡大が進行しているナンキンハゼとナギの春日山原始林における分布を明らかにし,両種の分布拡大の要因解析を行う.2)現地調査と空中写真により,春日山原始林内の植生構造を明らかにする.3)春日山原始林とその周辺域の植生景観の変遷を明らかにする.4)植生構造および植生景観の変遷に関するデータを解析し,植生構造および周辺環境を定量的に評価する.5)過去から現在までの植生構造・植生景観の変遷を,シカの生息・行動域との関連性から検討する.ことを目的として調査・研究を進めている. GPSにより移入種ナンキンハゼとナギの分布を数量的に把握するための現地調査を行った結果,平成15年までに春日山原始林のおよそ90haについて踏査することができた(平成15年以前の調査域を含む).その結果,ナギとナンキンハゼは,H<1.3mでそれぞれ3875,8305,H【greater than or equal】1.3m(DBH<10cm)でそれぞれ3121,884,DBH【greater than or equal】10cmでそれぞれ533,76確認することができた.それらの分布要因を検討すると,ナギではシードソースである御蓋山からの距離と高い相関があると考えられたが,ナンキンハゼではシードソースからの距離よりもギャップなど森林構造との相関が高いと考えられた.なお,本調査は春日山原始林の特別天然記念物エリアのおよそ1/3のエリアを終えたところであり,その段階で,非常に多くの移入種個体数が確認されたことになる.ナギとナンキンハゼは侵入の由来やその生態的特性も大きく異なる.両種の分布特性は今後の春日山照葉樹林の動向に大きな影響を与えると考えられる.さらに,両移入種はニホンジカが採食しない種であり,両種の分布は奈良公園平坦域に生息するニホンジカの高密度化とも深く関わっていると推察される.今後さらに調査を継続し,詳細な分布状況と分布の要因解析を行いたいと考えている. 植物社会学的調査による植生構造の現状把握もあわせて進めており,種組成がきわめて単純化していることなども明確になりつつある.とくに環境省が設定している特定植物群落での森林構造と種組成の調査により17年間の森林動態から,照葉樹林後継種の欠如などの問題が明らかにされた.
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Research Products
(2 results)
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[Publications] Yuri MAESAKO, Satoshi NANAMI, Mamoru KANZAKI: "Invasion and spreading of two alien species, Podocarpus nagi and Sapium sebiferum, in a warm-temperate evergreen forest of Kasugayama, a World Heritage of Ancient Nara"International Symposium Global Environment and Forest Management (proceedings). 1-9 (2003)
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[Publications] 前迫ゆり: "春日山原始林の特定植物群落(コジイ林)における17年間の動態"奈良佐保短期大学研究紀要. 11. 37-43 (2003)