2003 Fiscal Year Annual Research Report
酸素発生型光合成の成立に伴うクロロフィル生合成系の進化
Project/Area Number |
15570033
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
藤田 祐一 名古屋大学, 生命農学研究科, 助教授 (80222264)
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Keywords | 酸素発生型光合成 / クロロフィル生合成 / プロトクロロフィリド還元酵素 / ラン藻 / 光合成の進化 |
Research Abstract |
酸素発生型光合成の成立により、祖先ラン藻は無尽蔵な還元力として水を利用可能となり、地球上のあらゆる環境で生育することが可能となった。その結果、嫌気的であった地球環境を好気的へと変革することとなった。しかし、祖先ラン藻のクロロフィル(Chl)生合成系には酸素に対し高い感受性を示すニトロゲナーゼ類似の酵素(光非依存性プロトクロロフィリド還元酵素;DPOR)が用いられていたと考えられることから、この酵素活性を代替する酸素耐性の酵素を新たに創出することが、自身がもたらした酸化的環境で生き残るためには必須であることが示唆されていた。本研究では、現生のラン藻Plectonema boryanumを材料として、酸素耐性のプロトクロロフィリド還元酵素(光依存性プロトクロロフィリド還元酵素;LPOR)を欠失した変異株を種々の酸素条件下での生育を検討することにより、酸素耐性の酵素の創出された時期の推察を試みた。強光条件下において、DPOR欠損株は野生株と同じようにいずれの酸素濃度下でも生育したが、LPOR欠損株は3%(v/v)以下の酸素濃度下でのみ光合成による生育が可能であった。このLPORの限界酸素濃度は、約20億年前の地球大気の酸素濃度と一致していることから、祖先ラン藻においてLPORは遅くとも20億年前までには創出されていたことが推察される。 嫌気条件下で生育したLPOR欠損株の細胞には、DPORのサブユニットであるChlLとChlNが野生株に比べて著しく大量に蓄積していることを見いだした。LPOR欠損株では、嫌気的条件に加えて、DPORの含量を増加させることによりLPORの機能を代替した結果、光合成的な生育が可能となったと考えられる。また、細胞内のプロトクロロフィリドのレベルを検討した結果、プロトクロロフィリドの蓄積がchlL-chlNオペロンの誘導に関与していることが示唆された。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] Kada, S. 他4名: "Arrest of chlorophyll synthesis and differential decrease of photosystems I and II in a cyanobacterial mutant lacking light-independent protochlorophyllide reductase"Plant Molecular Biology. 51巻・2号. 225-235 (2003)
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[Publications] Fujita, Y. 他1名: "The light-independent protochlorophyllide reductase : A nitrogenase-like enzyme catalyzing a key reaction for greening in the dark. In Porphyrin Handbook, edited by Kadish, K.M., Smith, K.M., Guillard, R. vol. 13"Academic Press. 48(109-156) (2003)