2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15570046
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
窪川 かおる 東京大学, 海洋研究所, 教授 (30240740)
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Keywords | ナメクジウオ / 進化 / EST / 脳 / 神経ペプチド / ステロイド / 遺伝子 / 遺伝子発現 |
Research Abstract |
本研究の目的は、脳・神経-内分泌系が、脊椎動物への進化の過程でどのような構造上および物質的な変化をしてきたかを推測し、脊椎動物に本来備わる基本的な脳・神経-内分泌系を明らかとすることである。そのため、無脊椎動物のうちで最も脊椎動物に系統的に近縁であるナメクジウオを材料とした。ナメクジウオは脊椎動物の祖先として、そのユニークな系統上の位置付けが注目されているが、内分泌調節にかかわると考えられる神経ペプチド、タンパク質ホルモンの遺伝子の存在はまだよくわかっていない。そこで、ナメクジウオの神経管を集めてEST(Established sequence tag)解析をおこない、EST遺伝子配列と既知遺伝子の配列との相同からナメクジウオの脳・神経に存在する内分泌物質の遺伝子探索をおこなった。結果は、RFamide、Neuropeptide Yなどの神経ペプチド、ステロイド代謝酵素のうち、P450scc、P450c17、17α-20β-hydroxysteroid dehydrogenaseの酵素の存在が明らかとなった。しかし、脊椎動物の下垂体ホルモンに相同なホルモンは見つからず、GnRHのような視床下部ホルモンも見つからなかった。次に、得られた内分泌関連物質の遺伝子が発現する部位をIn situ hybridization法で調べた。その結果、RFamideは神経管に無数に存在する色素杯の周囲の小型神経細胞に発現するとともに、脳部分背側のJoseph細胞に発現した。Neuropeptide Yは神経管の神経細胞に多数発現するが、背根部分には発現しなかった。ステロイド代謝酵素は発現が弱く、発現量が少ない可能性が考えられる。以上から、ナメクジウオの脳・神経-内分泌系は、脊椎動物と類似の神経ペプチドおよび脳ステロイドの存在が明らかとなり、祖先型神経ペプチドおよび脳ステロイドの神経活動での重要性が示唆された。
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Research Products
(3 results)