2004 Fiscal Year Annual Research Report
化石記録に基づくユーラシア大陸東西のフロラ分化プロセスの解明
Project/Area Number |
15570072
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
百原 新 千葉大学, 園芸学部, 助教授 (00250150)
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Keywords | 第三紀 / 大型植物化石 / 気候変化 / 種分化 / 第四紀 / 中部ヨーロッパ / 化石フロラ / 歴史植物地理 |
Research Abstract |
本研究では,ユーラシア大陸東部の日本と,大陸西部に位置するポーランドの新第三紀層で共通に産出するブナ属,ヒシ属,クルミ属などの植物化石標本を比較し,地質,古環境に関するデータを収集することで,第三紀以降の北半球温帯域で進行した環境変化とユーラシア大陸の東と西における植物の種分化プロセスとの関係の解明を試みた.今年度は,日本産新第三紀〜更新世植物化石とその堆積環境について観察を行った.本州中部瀬戸層群の中新世後期初頭植物化石群のうち,ブナ属葉化石の形態を検討した.その結果,約10Maのブナ化石Fagus stuxbergiiは約7Maの同じ種類の葉よりも二次脈数が多く,後期鮮新世から更新世にかけて産出する類似のブナ化石F.microcarpaになるとさらに二次脈数が減少するという,時代の経過に伴う二次脈数の減少傾向が明らかになった.同様の傾向が中部ヨーロッパの同時代のブナ化石にも見られることと,15年度の調査で明らかにしたように日本の約10Maのブナ化石と中部ヨーロッパ産のブナ化石の形態がほとんど変わらないことを考えると,ブナ属が漸新世以降にアジアからヨーロッパに分布を拡大したのち,後期中新世以降にユーラシア大陸の東西で同様の形態変化がおこったことになる.ヒシ属についても,中新世産のものは祖先と考えられるアスナロビシ属Hemitrapaに近い形態をもつmorphotypeが多く,鮮新・更新世に現生種に近いmorphotypeが分化する進化傾向があり,この傾向は日本も中部ヨーロッパも同様であることがわかった.すなわち,中新世後期にチベット高原の上昇や気候の寒冷化によってユーラシア大陸東西での植物の遺伝的交流が途絶えた可能性が高いが,この時代以降もブナ属とヒシ属についてはユーラシア大陸の東西で同様の平行進化が進行したことが明らかになった.
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