2004 Fiscal Year Annual Research Report
白亜紀の炭化植物化石に基づく原始的被子植物群の初期進化の解明
Project/Area Number |
15570076
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
高橋 正道 新潟大学, 理学部, 教授 (00154865)
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Keywords | 白亜紀 / 植物化石 / 上北迫植物化石群 / 被子植物 / 初期進化 / 小型化石 / ヤマグルマ科 / 双葉層群 |
Research Abstract |
ダーウイン以来、「被子植物の起源と初期進化」は、解き明かすことのできない極めて難解な問題であると言われてきた。ところが、最近の白亜紀の植物化石の新発見などの研究成果によって、そのベールが少しずつ取り払われようとしている。従来から、動物化石に比べて、被子植物の初期進化の解明につながるような植物化石は少ないと言われてきたが、白亜紀に急激な炭化作用を受けた後、特殊な堆積条件下におかれた地層の中には、原始的被子植物群の果実、種子、花などが、保存性の良い植物化石が残っていることが分かってきた。これまでに、ヨーロッパと北アメリカ東部および日本の地層から立体的に保存された植物化石が発見されてきた。日本では、後期白亜紀の福島県双葉層からシクンシ科、ミズキ科、クスノキ科などの被子植物始源群の化石が発見され、上北迫化石植物群と呼ばれている。 今回報告するのは、放射状で多心皮性の両性花の2個の果実化石である。これらの果実化石は、直径3.5mmの小さく、有柄で発達した花床に10個の離生心皮が輪生しており、その中央部には空隙が認められる。個々の心皮は鎌型となり、ドーム状に発達して、先端部が中央に集まっている。背軸側に溝がある。心皮の周囲には雄蕊の花糸が輪生状に配列している。雄蕊の数は全部で100個位あったと推定される。花弁の基部が残っており、この植物には花弁が存在していたと考えられる。ガクは周囲に厚く広がっており、裂片状になっていた。この化石についていた花粉は、3溝型で網目模様であった。植物化石のこれらの特徴は、ヤマグルマ科に最も近縁であることを示唆している。現生のヤマグルマは、早期に脱落する花弁をもち、果実が成熟時に反り返るなどの、今回発見された植物化石とは異なる形質ももっているが、今回、発見された多心皮性の植物化石は、花の基本構造の特徴や花粉形質から、真正双子葉類の基底部に位置しているヤマグルマ科である可能性が高い。
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Research Products
(1 results)