2003 Fiscal Year Annual Research Report
ニホンカナヘビ(爬虫綱,トカゲ目)に関する個体群分類学的研究
Project/Area Number |
15570081
|
Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
太田 英利 琉球大学, 熱帯生物圏研究センター, 助教授 (10201972)
|
Keywords | ニホンカナヘビ / トカラ列島 / 大隈諸島 / 九州 / 分類 / 生物地理 / 形態形質 / 酵素タンパク |
Research Abstract |
研究計画に従いトカラ列島の中・北部,大隅諸島,鹿児島県の本士部を中心に標本の採集を行った.得られた標本については写真で生時の体色を記録した上で肝臓を摘出した.肝臓は超低温冷蔵庫で保管し遺伝的解析に供した.肝臓摘出後の本体はフォルマリンで固定した上でエタノールに液浸し,形態的観察・比較に供した.今回得られた標本,ならびにこれまでに収集された博物館や大学の収蔵標本を用い12係数形質,15測定形質,3定性形質の産地間での比較を行った. このうち計数形質では前肢の付着部や後肢の付着部における背部大型鱗の列数をはじめとした5形質で,産地間における明瞭な変異が認められ,そのすべてでトカラ列島中・北部の集団と鹿児島県本土部の集団との間で差異が最も著しかった.これに対し大隅諸島の集団は3形質で鹿児島本土の集団と大幅に重複し,2形質では両集団の中間的な状態を示した.測定形質については主成分分析によって一括して比較したところ,計数形質の場合と同様,トカラ中・北部の集団と九州本土の集団が比較的大きく分離し,大隅諸島の集団はその中間でやや後者寄りに位置づけられた.定性的形質のうち腹面の鱗の表面形状において比較的明瞭な地理的変異が認められ,九州本土集団とそれ以外の島嶼集団との間に差異があったが,形質状態はその間で一部重複した. 以上の結果は本研究のきっかけとなったミトコンドリアDNAの配列変異にもとづく解析の結果とは,大隅諸島の集団とトカラ中・北部の集団との間に比較的明瞭な差異が示される一方,後者と鹿児島県の九州本土部の集団がより近く位置づけられる点で異なっている.こうした形態的変異とミトコンドリアDNAの配列変異それぞれにおける地理的パタンの不一致が,ニホンカナヘビ種内の系統や集団遺伝におけるどのような事象を反映するのかについては,目下酵素蛋白を支配する各遺伝子の解析にもとづき検討を進めている.
|
Research Products
(1 results)