2005 Fiscal Year Annual Research Report
ニホンカナヘビ(爬虫綱,トカゲ目)に関する個体群分類学的研究
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15570081
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
太田 英利 琉球大学, 熱帯生物圏研究センター, 教授 (10201972)
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Keywords | ニホンカナヘビ / 地理的変異 / 形態形質 / ミトコンドリアDNA / 分類 / 生物地理 / トカラ諸島 / 大隅諸島 |
Research Abstract |
まず前年までの結果を補足するサンプリングを行った。他の研究者や研究機関が所有・収蔵するサンプルについても提供を受け、解析・検討に加えた。絶対的体サイズの指標である頭胴長においては、雌雄のいずれにも地域間で著しい変異があり、全体として緯度・高度の増加に伴って増加する傾向が見られた。四肢の頭胴長に対する比にも地理的変異が認められた。屋久島内で特に変異が著しく、高地のものは足が短く低地のものは他の地域のものとあまり変わらなかった。胴腹面の鱗については、今回追加されたサンプルにおいてもその地理的位置関係とはあまり関係なく島嶼部でキールが発達し、いっぽう本土部では滑らかであった。これは昨年にたてた予想を支持・補強するものである。胴の背面を覆う大型鱗の列数は前・後肢それぞれの付着部周辺においてトカラ・大隅諸島のものではやはり少なく、それ以北のものでは多い傾向が認められた。ミトコンドリアDNAの塩基配列変異を解析したところ、まずトカラ・大隅諸島のもの(屋久島の高高度域のサンプルを含む)がきわめてよくまとまったクラスターを構成し、他のすべてのサンプルからなるクラスターと根元で分岐した。後者からはまず九州のもの(五島、壱岐のものを含む)が分岐し、次に近畿・中部地方西部(三重)のものが分かれた。残る中部地方中・東部(岐阜など)、北陸、関東、東北、北海道のものは、きわめて近い遺伝距離でよくまとまった。以上の結果はニホンカナヘビ全体の中での分断がまず、鹿児島の島嶼部とそれ以外との間で生じたことを強く示唆している。このことと、想定される更新世以降の古地理とを併せて考えると、両者はすでに生殖的な隔離機構を発達させた異なる生物学的種に分化していることが予想される。関東・東北地方以北の集団は、最終氷期以降、気候の温暖化に伴い急速に北上したものと考えられた。
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Research Products
(2 results)